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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

ALL STAR SUPERMAN (DC, 2005-8)

DC

 第1回は軽いジャブのつもりで邦訳版も出た筈の『ALL STAR SUPERMAN』を扱おう。
 宿敵Lex Luthorの陰謀で過度の太陽エネルギーを浴びたことにより、かつてない程の力を手に入れると同時にそう遠くない死を宣告されたSupermanが残り僅かな余生をどう過ごすのか描いた名作中の名作。


原書合本版(Amazon): All Star Superman VOL 01(この版はもう絶版みたいなんで下のをどうぞ)


 ライターは『ARKHAM ASYLUM』などでお馴染みGrant Morrison、ペンシルはMorrisonと長いお付き合いのFrank Quitely、更にインクとカラーは『WE3』で二人と共に仕事をしたJamie Grant。アメコミの名作と讃えられるのがもっぱらな本作だが、クリエイター陣はイギリス出身でがっちりスクラム組んでおり、そのためか雰囲気としちゃ『JUDGE DREDD』など、ブリティッシュ・コミックス(以下、ブリコミ)に近い感じがする。


 初心者が読んでも分かりやすければ、コアなファンに対するサービスもふんだんに盛り込まれているのは『AA』始め、『SEVEN SOLDIERS』や『FINAL CRISIS』でも散見されるMorrisonの得意技だろう。多分、ネットを漁れば過去作からの元ネタリストみたいのが見つかると思う。むしろ中途半端に知っていた方が、リブートであったりなかったりにされている色んな時代の設定がごっちゃになっているため混乱するかも。


邦訳版(Amazon): オールスター:スーパーマン (DC COMICS)

 一般にSupermanの描き方としては大きく二つの種類があると言われていて、実写で言えば『MAN OF STEEL』(2013)的な描き方と、『SUPERMAN』(1978)的な描き方との二通りをイメージして貰えれば分かりやすい。
 1つが彼を両義的で傷つきやすい存在として描く方法。Supermanの死を描いた『Death of Superman』や、Mark Millarによるエルスワールド物の『Red Son』などがその代表と言われる。これらに関しちゃ私自身未読なのでなんとも言えないけれど、個人的にはNew52の『ACTION COMICS』は一貫してこの描き方だったように思う。ここだと彼はやれ力を失うだのやれ誤った選択をするだのと、良くも悪くも人間臭い。
 それに対してSupermanを描くもう1つの方法は、本作のようにその善性の多かれ少なかれを絶対化することにより、彼を文字通りの”超人”ーもっと言ってしまえばある種の”神”ーとして描く方法だ。こっちの彼はまずぶれない。とにかくやたらと「いい人」だ。初期だとこっちの作風が圧倒的多数派だったが、最近だとあまりみない。近年こういった作風をとるクリエイターで代表的なのはMorrisonやGeorge Perez辺りだろうか。
 確かに少々強引で傲慢とも受け取られかねない手法ではあるものの、こちらの方が精神的にも肉体的にも制限がないためダイナミックかつオリジナリティのある作品が生まれやすいかと思われる。Supermanほどのキャラクターともなると案外これをやっても耐えうるし、むしろこういうことは彼でしかできない。

 癖のあるQuitelyのアートや、ネオンのような蛍光感を備えるGrantのカラーにもこちらの方が合っている。特にQuitelyのアートはリアリスティックな絵柄にカートゥーン調の動きを加えるものなので、地に足が着きっぱなしでいるよりは少々浮世離れしていた方がしっくりくる。少し前にMark Millarの『JUPITER’S LEGACY』でQuitelyのアートを見かけたが、変に重い話に足が引っ張られており、アートが十分に羽を伸ばしきれていない風があった。


 ややもすると勧善懲悪的スーパーヒーローの代表格としてやれ現実味がないだの感情移入できないだのと侮られがちなSupermanだが、そう揶揄する多くの者が必ずしも理解しきれていないのは、彼が努めて余裕そうに見えるよう行動しているということであり、そのことは本作でも暗示されている。
 憎い宿敵を汚い言葉で罵り、気の合わない相手を助けるのに面倒臭そうな表情を浮かべることは簡単だ。だが、そんなヒーローのために人々は空を見上げるだろうか?危機に陥った際、絶対に助けてくれると希望を抱くだろうか?
 彼の救済行為はその場その場での即時的かつフィジカルな影響のみならず、それが後にどう他者をインスパイアしていくのかという漸次的かつメタフィジカルな影響をも考慮したもの なのだ。 それは”スーパーヒーロー”という単語を耳にして誰もが思い浮かべる存在に課せられた宿命であり、彼にしかできない行為である。


原書合本版(Amazon): All Star Superman(こっちは新装版)