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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

GREEN ARROW : QUIVER (DC,2001-02)

DC

 そろそろ知名度とか考えずに作品選んでいきましょうかね、という3回目。本日取り扱う作品は実写ドラマ『ARROW』でも有名なOliver Queen a.k.a Green Arrowが活躍する『GREEN ARROW: QUIVER』です。


原書合本版(Amazon): Green Arrow by Kevin Smith Deluxe Edition(本作を含む新版らしいが発売日未定…)


 とある事件で死亡していた筈のGreen ArrowがStar Cityに帰って来た。猟奇殺人犯”Star City Slayer”の次なる凶行を食いとめようと奔走する彼は、同時に死から舞い戻った自身に関する謎にも迫っていく…。

 本国ではGAの必読作として数えられている逸品だが、一方で前後の話や人間関係を知らないで読むと混乱を招きかねない。私がこの合本を初めて手に入れたのはまだDCのロゴが”ブレット”と呼ばれるモノクロ円形星四つだった頃だが、当時はDC初心者(多分JLのカートゥーンを観てる程度だったんじゃなかろか)だったので、DCユニバースの四方から駆けつけてくるゲスト達に度々「ほぁっ?」となりながら読んでた記憶がある。ただ逆にこれを読んだおかげで今もGA関連には人間関係などで悩まされません。

 ライターのKevin Smithは自他共に認めるオタク映画監督で、たまにコミックでライターを務めては良作傑作を生み出していく手練(『GREEN HORNET』の実写版は彼がやればよかったのに…)。Batmanのクリエイター達にインタビューするポッドキャスト”FATMAN ON BATMAN”なんかも配信しており、たまに爆弾ネタを投下する。何年か前に出てきた『Killing Joke』でBatmanがJokerを殺害した説の出自も確かここだったかと。
 組んだアーティストはペンシルにPhil Hester、インクにAnde Parksと手堅い印象(3回目にしてようやくクリエイター的にもアメコミらしいアメコミ扱えた…)。個人的にHesterはここ最近急に魅力的に思えるようになったアーティストの1人で、現在Warren EllisとAftershockで連載している『SHIPWRECK』も素晴らしい。あと、今気づいたんだけどカバーはノワール系ライターの筆頭Matt Wagner。ストーリー専門かと思っていたら、絵も中々お上手なのね。


原書キンドル版: Green Arrow Quiver (3 Book Series)

 …
 …
 …ほぁっ。
 閑話休題。たった今も確認するためだけに本を開いたつもりが、すっかり物語に吸い込まれてましたわ。


 まあ、何というか。純粋に面白い、というのが何よりもな感想。Smithのコミックは本当にまず面白い。そこから始まる。アクションとドラマの配分も良いし、コメディやロマンスの要素もしっかり含まれている。話の中身はスカスカでも無理に詰め込んだ感じでもなく、登場人物同士の化学反応も良好。何より、テンポが良いんでさくさく読める。HesterやParksのアートも目に優しい。前回の『VfV』をずっしりと重たい高級料亭とするなら、こちらは気軽にいくらでも食べられるファストフード店といったところ。前者は一度食べるとしばらく胃に残るけれど、後者は毎日でも食えます。


 先にも述べた通り、本作には古今東西からヒーローやヴィランが登場するのだけれど、お馴染みJustice Leagueの面々のみならずEtriganだとか、敢えてここでは名前を伏せる驚きの人物なんかも話に絡んでくるのも魅力の一つ。「マスク着ければこの髭でも正体バレない」とか「ヒーローは死んでもいつか生き返る」などといった暗黙の了解へも的確にツッコミを入れ、時にはそれを逆手にとってさえ物語を前進させる手際は鮮やか。
 あれこれ難しいこと考えずに気軽に読めるエンターテイメントとして、実にアメコミらしいアメコミといえるのではないだろうか。


原書合本版(Amazon): Green Arrow: Quiver (New Edition)