VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

FEAR AGENT (Dark Horse, 2005-11)

 みんな大好きタイムリープ物。特に日本では青春ものと相性が良いのか、最近特にやたらと見かけますな。アメコミの世界でもこの手の作品は多く、有名どころであるX-menの『DAYS OF FUTURE PAST』からImageで刊行している『ROCKET GIRL(今確認したら続きが出るって発表されてたぜ、ひぇっふー!)』まで様々なものがある。

 とある事情から宇宙の辺境で害獣(?)駆除屋としてくすぶっていた地球人Heath Hustonが、次第に宇宙全体を脅かす陰謀に巻き込まれていく『FEAR AGENT』もまた、そんなタイムリープバタフライ・エフェクトが鍵を握る作品の1つだが、本作はそれと同時にレーザー銃とジェットパックを装備した男が様々な異星人を相手に宇宙を縦横無尽に駆け巡る懐かしくも新しい冒険物語でもある。私が『スペース・ダンディ』に期待していたものはここにあった。
 はあ、宇宙服と空になったビール缶ってどうしてこう相性が良いのかしら…(うっとり)。


原書(Kindle版もあり): Fear Agent Volume 2: My War

 ライターのRick Remenderは『IRON GIANT』や『TITAN A.E.』(言われてみると本作と雰囲気似てるかも)などといったアニメーション映画にも関わったことのある人物で、少し前までMarvelを主な活躍の場としていたヒットメーカー。現在はスーパーヒーロー物から少し距離を置いてImageから『DEADLY CLASS』や『BLACK SCIENCE』を出している(前者は邦訳版で1巻だけ見かけたことがある)。
 Marvelで連載していた作品群は読んだことがないから何とも言えないが、Imageからの作品を見ている限り、スタートダッシュは遅めだけど後々驚かせてくれる合本向けのライターかと思われる。 

 本作も最初のうちは基礎固めと伏線張りで一見すると平均的なレベルのアメコミとそう大差ないものの、その分後半の伏線回収パートからは怒涛の勢いで話が進む。加えて本作は時空改変があったり人格交換があったりで間をおくと何が何だかわからなくなるので、これから読もうとする人がいれば本編(私は所有していないが短編集が1つあるらしいので)は一度に揃えて一気読みすることを推奨したい。実際に読んでみるとラノベのようなテンポの良さや、またTony MooreやJerome Openaなどによる癖のないカートゥーン調な絵柄もあってサクサク読み進めることができる。とりわけVol.5からVol.6にかけての展開は白眉の一言だ。最終#32などは何度眺めてもぐっとくる。良質な4クールアニメを見終えた時と同じくらいの満足度が得られるだろう。


 ところでこういったタイムリープ物、特に「何度でもやり直して幸せを手に入れるわ!」系作品に関して、昔あるFantastic Fourでこのネタを扱った短編を読みましてん(今手元にないからうろ覚えだけど多分『Marvel Knights 4』の1編かと)。
 それに拠ると、過去をやり直したところで新たに並行世界が分岐するだけで、そこで救った人物はかつて自分が救えなかった存在とは異なるそうで。そこんとこ突き詰めて考えると、例えば主人公が何らかの原因で死んだ恋人と再会するために何百回と同じ時間を繰り返した場合、それはやり直して失敗する度に「恋人が死ぬ」世界を作り出しているため、恋人を何百回と殺しているのと同義なのでは…なんて思うようになって以来、何だかこのネタを扱う作品と遭遇する度、腹の中に爆弾を抱えたような心地がしないでもない。

 スマホなどで人の時間なんてどんどん加速してるのに、まだ時を超えたいものかね。


Kindle版: Fear Agent (Issues) (6 Book Series)