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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

『STORMWATCH VOL.1』 (DC/Wildstorm, 1996-97)

 2017年のベストコミックは現時点で既に決定している。少なくとも私の中では。


原書合本版(何故かAmazonだと見つからないので楽天へのリンク): Stormwatch, Volume 1 [ Warren Ellis ]

 あのWILDSTORMの世界が帰ってくる。しかも、Warren Ellis監修で。もう興奮せずにはいられない。初めてこのニュースを目にした時、思わず躍り上がったくらいだ。

 国連が直轄管理する本格的な特殊能力者達による治安維持部隊、Stormwatch — 仲間の裏切りに遭い瓦解しかけたチームを立て直すべく、WeathermanことHenry Bendixは都会人Jack Hawksmoorや20世紀の化身Jenny Sparksなどの新メンバーを加入させると共に抜本的改革を行い、チームを新生させる。

 エッジの利いたコンセプトはいかにも1990年代らしいコミックと言えよう。実際、本作は元々90年代に一世を風靡したWILDSTORMというレーベル(当初はImage,その後DCに移行)でJim LeeとBrandon Choiが生み出したスーパーヒーローチームだ。

 さて、このシリーズにEllisが初めて関わったのは#37から(合本もここから)だが「スーパーヒーロー物に興味がない自分でも唆られるようなスーパーヒーロー物を(Ellis)」というコンセプトで作られただけあって、その動きの効率の良さはヒーロー物というよりは『NCIS: LA』などの犯罪ドラマを見ているような感覚に近い。
 とりわけ前半のVol.1は基本的に一話完結であり、1つの事件に数ヶ月から半年近くかかる最近のコミックの展開に慣れている身としては事件が起こってから解決までを僅か22ページの中でやってのけてしまうスピード感は病みつきになる。

 Ellisは続き物でも傑作を連発する一方、一話完結の話を用いることも多く、先日語った『FELL』はじめMarvelの『MOON KNIGHT』などもこの部類に入る。その1つの到達点とも言うべき『GLOBAL FREQUENCY』については今後この連載で語るつもりだが、プロ集団が世界を効率的かつ効果的に危機から救ってみせる手法はここで既にその片鱗を覗かせている。

 勿論、プラグマティックなドラマだからといってキャラクターが犠牲になっているわけではない。Ellisは登場人物の心情を覗かせる物語上のツボのようなものを抑えており、また各人をその魅力が最大限に発揮される位置へ適材適所に配置しているため、戦闘中に一言毒づくのにもそれぞれの性格がよく現れている。
 このチームメンバー達が任務中に毒づくのもMarvelやDCのスーパーヒーローではちょっと見ない、本作の特徴かもしれない。あるいはSpider-manなら敵を揶揄するしSupermanなら敵を宥めることもするだろうが、本作に登場するヒーロー達はいかにも面倒くさそうに”Bastard.(”!”ではなく”.”なのもポイント)”などと吐き捨てる。

 また、仲間が裏切ってしまったような時も一般のヒーロー物なら他のメンバーは心が引き裂かれてチームも瓦解しようが(『HOUSE OF M』や『TEEN TITANS』の記事をどうぞ)、本作では「別にそれほど好きじゃなかった」「ひどい有様」と1,2コマであっさり片付けてしまう。
 ドライだ。実にドライ。このノワール・フィルムの荒んだ感じを現代風にアップデートしたような味付けが癖になる。

 さて、本作の面白さはここで終わらない。合本のVol.1に収録されている分は言ってみればEllisが90年代という場所で地ならしをしているようなものだ。彼が本格的にこのチームを自分のものにしていくVol.2、そしてスーパーヒーローというジャンルを根本的に作り変えてしまう作品がまだその先にある。

 そして、2017年2月から始まる全く新しいWILDSTORM。期待せずにはいられない。