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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

『STORMWATCH: VOL.2』 (DC/Wildstorm, 1997-98)

DC/Wildstorm

 プレゼントを渡すとしよう。
 クリスマスでも誕生日でも何でも良い。
 とにかく大切な人にプレゼントを渡すとしよう。
 プレゼントは何にする?
 相手が欲しいものか。自分が与えるべきだと思うものか。
 喜んで貰えるものか。相手のためになるものか。
 考えるだけでも頭が痛い。いっそ、そもそもプレゼントなど送らない方がマシじゃないかとさえ思い始める。
 それを70億人分やるとしたら。とてもまともな精神じゃやってられない。
 だが、それをやるのがスーパーヒーローだ。


Stormwatch Vol. 2

 と、いうわけで今回はWarren Ellisがライターを務めた『STORMWATCH』の後半Vol.2について。Ellisも慣れてきたのか、1話完結ものだったVol.1と異なり、こちらは世界を理想郷とするべく活動を初めたスーパーヒーローチームとStormwatchとの対決を描いた話、新体制のチームが前体制の残した負の遺産に立ち向かう話、そして並行世界におけるチームに訪れる危機を描いた話と3つの続き物(+エピローグ1話)で構成されている。
 どの話に関しても語りたいことは山ほどあるが、取り敢えずここではいくつかの特に重要な点にトピックを絞ろうと思う。

 まず2つ目の物語に関して、ここではLGBT系のスーパーヒーローとしてはかなり先駆的な存在であるApolloとMidnighterが初登場する回として興味深い。
 今ではDCやMarvelでもゲイやレズビアンのヒーローというのはそれほど珍しくなくなったが、その動きが活発化したのは本当に最近のこ5年10年のことだ。Marvelは過去にLGBTキャラクターを持ち込まないという明確な編集方針があったし、DCも時折話のテーマとして同性愛を扱うことはあっても以前はそれほど深くは掘り下げてこなかった。

 そんな状況の中、EllisとアーティストのBryan HitchはApolloとThe Midnighterという2人のヒーローを紹介した。読んだ限りにおいて”Gay”などという単語は見当たらなかったし、派手にカミングアウトするような描写も見当たらないが、彼らの寄り添う様を見ればその関係性は明らかだ。
 2人が現在もDCユニバースで活躍していることから、読者が彼らをどう受け止めたかは明らかだろう。そして、これを皮切りに他のスーパーヒーローチームでも同様のキャラクターが出てくるようになった。現在の時流は彼らが作ったものと言っても良い。

 さて、もう1つ注目すべきなのが第1の物語と第3の物語だ。この2つはそれぞれの物語で異なる2人のWeatherman(チームの指揮官)を通じて持てる者の責任、”ノブレス・オブリージュ”について描いている。
 前者のWeathermanことHenry Bendixは世界をより良い方向へ導こうとする超人High率いるチームに対して、「世界を良くするのは自分でなくてはならない」というエゴイスティックな考えから刺客を差し向ける。
 他方、暴走した彼の役職を引き継いだJackson Kingは後者の物語において並行世界の危機を回避する方法を知りつつも「自分達の介入すべき領域ではない」と事態を看過する。

 かたや子供の就職先から結婚相手まで決めてしまう超介入主義のパパさん、かたや子供が学校でいじめに遭っていても教師の責任と言わんばかり放っておくネグレクトダディである。もっと言えば、High達のチームさえあしながおじさん的な方法でノブレス・オブリージュを果たそうとしている。
 それぞれがそれぞれの方法で世界を良くしようとしながら、結果的に彼らは皆失敗する。

 人類とは言ってしまえば礼儀を知らない子供だ。
 そんな子供を枠に押し込もうとしたところで反発は必至。かと言って、下手に出ればつけあがるし、放っておけば遠からず馬鹿なことをしでかすのは目に見えている。

 3人の父親が失敗するのを見たJenny Sparksは、そのどれとも異なる全く新しいアプローチを取ることとなる。

補記:えーとですね、実は上でご紹介した合本だけだと一部話が通じません。


DC Comics/Dark Horse: Aliens (Dc/Dark Horse)

こちらの本に掲載されている『WILDC.A.T.S/ALIENS #1』を#10と最終号#11の間に読まなけらばならない構造となっております。タイトルからも分かる通りの会社間クロス・オーバーですが、あっと驚く展開が待ってたり。「1つの話だけのために合本なんて買ってらんねー」という方は電子書籍でも良いので入手することを強く強く推奨しますよとだけ。