VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

『LAZARUS VOL.1: FAMILY』 (Image, 2013)

 あくまで個人的な好みだが、物語においてフィクション性はあくまで枠に徹している方が良いというのが私の持論だ。つまり、あらゆる創造は事実を引き出す役割を果たすべきである、と。もっと具体的に言うなら、宇宙人にしろ転生にしろ猟奇殺人事件にしろストーリーを前進させるあらゆる要素は、人や社会の本性に関する何らかの事実を浮かび上がらせるべきだ。


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 資源が枯渇し、人々が政治や宗教ではなく富で分断されるようになった近未来 — 世界を経済力で支配する16の家族にはそれぞれその有する科学の粋を集め、己の盾となり剣となるべく鍛え上げられた16人のLazarusがいた。そんなLazarusの1人であるCarlyle家の末娘Forever Carlyleはある日、身内に不穏な動きを感じ取った父親から極秘の命令を受けて隣のMorray家のテリトリーへ赴くが…。

 こういう作品はありふれていそうで意外となかったかもしれない。ライターのGreg Ruckaは本作をImage編集部へプロモーションするに当たってそのコンセプトを『GODFATHER』+『CHILDREN OF MEN(実写邦題の『トゥモロー・ワールド』の方がピンとくるか)』と言ったらしいが、まさに的を射た喩えだ。本作では経済が政治や宗教さえ覆い尽くした格差社会を舞台に、世界を支配する16のファミリーを巡る権謀術数と、それに振り回されるCarlyle家の末娘Foreverの姿が描かれる。


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 クリエイター陣はまず先に述べたライターのGreg Rucka。彼は小説家として多くのサスペンス物を発表している他、スーパーヒーロー方面でも傑出した才能を発揮しており、最近新しくタイトルを獲得したBatwomanの生みの親の1人としても知られている。
 アーティストは以前Ruckaと『GOTHAM CENTRAL』で組んだことのあるMichael Lark。Larkはストーリーに関してもRuckaと積極的に意見を交わしている他、本作のアートにも並大抵でないエネルギーを注いでおり、その力強さと繊細さが同居する線画は、敢えて一般的なアメコミとは少し違った趣にするため採用されたヨーロッパ出身のSanti Arcasのカラーと相まって、本作独自のネオ・ノワールな世界観を作り出すことに成功している。

 本作の主人公Foreverは人造人間だ。家族の懐刀である彼女は親兄弟に命じられたことに全て従うよう、その遺伝子にプログラムされている。
 だが、彼女自身はそのことを知らない。Foreverにしてみれば、喩えそれがどんなに嫌な命令であっても従うのは、純粋に家族に貢献したいがためだ。
 そう、突き詰めると本作は家族に振り向いてもらおうとひたむきに努力する1人の女性の物語と言える。
 彼女は父親から愛されるためなら何だってしてみせる。その父親が彼女のことを道具としてしか見ていないとは知らずに。
 子供はある時点で親からの愛を諦めなければならない。否、親だけではない。人はある時点で他者からの愛だけを行動動機とする自分から脱却し、自らの価値観を追求するようになる必要がある。
 本巻のラストでForeverはその契機を得る。
 彼女が今後、どう1人の女性として自身を確立していくかに注目したい。


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