VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

『SUNSTONE VOL.1』 (Image, 2014)

 『SEX CRIMINALS』からそう日を置かずして再び性をテーマにした作品をば。『SC』は性にSF要素を絡めた物語だったが、本作はそういった浮世離れしたファクターを全て省いてひたすらBDSMを丁寧に描写した官能作。


合本Kindle版: Sunstone Vol. 1


 体を拘束されることに快感を覚えるLisaと、幼い頃からドム(BDSMなどの性行為で支配する方)に憧れを抱いてきたAlly — ネットで知り合った2人は遂にその関係を一歩先へ進めることに。だがBDSMに関して耳年増な2人は双方ともに実際の経験はないに等しかった。
 
 誰をも魅了するアートと、誰も初見では正しく発音できない名前で有名なStjepan Sejic(確か「スティエパン・セイジ」だか)。Image傘下のTop Cowレーベルを主な活躍の場としており『WITCHBLADE』などで一流アーティストとしての地位をほしいままにしていた彼だが、ある時を境にスランプへ突入、気晴らしにネットへアップし始めたキンキーなイラストやショートコミックが本作の原点。
 この時点では同じキャラを使いまわしつつ、時系列的な繋がりは全く考えていなかったものの、ネットで人気を獲得していくにつれ徐々にストーリーが出来上がり本作となったとか(その辺りの話も巻末に収録されている)。

 さて、肝心の内容に関してだが。
 2人の女性によるBDSM体験記 — ぶっちゃけ中身はそれだけ。少なくとも本巻では何か事件が起こるわけでもなく。アメコミ版『ナナとカオル』(女同士だけど)という認識でそれほど問題ないかと。
 とは言うものの、それだけでここまで読む者を惹きつけられるのもすごい。

 間違ってはいけないのが、本作は単にBDSM好きのみを対象にしたコミックでもなければ、ましてポルノなどでは断じてないということ。
 BDSMの世界を追求するだけのストーリーならばプレイが過激になる方向にしか展開しようがないため徐々に読者も離れていこうが、本作はそういった18禁作品とは一線を画す。作中における性行為はかなりぼかして描かれているし(但し描かれる部分は無修正)、私も含めBDSMにそれほど興味のない読者も安心して(?)読める内容となっている。


原書合本版(Amazon): Sunstone 1

 
 この作品はあくまでLisaとAllyが初体験から徐々にプレイを発展させていく様を追うストーリー、その関係性の発展に軸を置いている。
 上記『SEX CRIMINALS』の記事でセックスとは人が他者と自らの距離を測るものさしだということを述べたが、極端に言ってしまえば本作でBDSMが主題とされているのはレザースーツやプレイ時の体位がアート的に見栄えが良いからに過ぎず。そういった装飾を全て取り払うと本作はAllyとLisaという2人の女性が互いのものさしを擦り合わせながら少しずつ近づいていく様を描いた、誰もが共感可能な”セクシュアリティ”と”パートナーシップ”の物語に落ち着く。

 先に述べたような経緯で制作されたコミックであるため、本作はSejicのDeviant Artページ(「SHINIEZ」というアカウント)で無料公開されている。気になった方は一度(無論、内容が内容のため自宅で1人の時に推奨するが)サイトへ足を運んで読んでみると良いかもしれない。きっと実際の本も手に入れたくなる筈だ。