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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

『SHUTTER VOL.1: WANDERLOST』 (Image, 2014)

 2017年2月で創立25年を迎えるIMAGE COMICS — その功績に敬意を表明する意味でここまで9つの作品を連続で扱ってきたわけだが、いよいよそのトリを飾る10作目は個人的な一番のお気に入り。


分冊キンドル版: Shutter #1

 私達の住む世界よりもほんの少し想像力の豊かな世界 — かつて冒険家として世界中を渡り歩いたKate Kristopherはだが、10年前に起こったあることをきっかけに冒険の日々からは身を引いて現在は平凡な毎日を過ごしていた。しかし、そんな彼女の平穏は27歳を迎えた誕生日に破られる。父の墓参りへやってきた彼女を拉致しようとする発光忍者とブリキ男、そこへ横槍を入れるライオンギャング、加えて彼女の部屋を木っ端微塵にするヤモリテロリスト……辛くも襲撃者達の手から逃れたKateは、相手が漏らした自らの「親族」に関する手がかりを求めて再び冒険に乗り出す。

 ライターのJoe KeatingeはImageを主な活躍とする若手のライター。MarvelやDCでの大きな実績は残念ながらまだないものの、プロレスを題材にした『RINGSIDE』など独特の視点で興味を唆られるオリジナル物を既にいくつか制作している。
 アーティストのLeila Del Ducaも発掘されたばかりの才能。彼女の描くキャラクターはどれも愛嬌があり、かつ非情に表情豊か。表情を変えることのできない目覚まし猫のAlarm Catや骸骨の執事Harringtonにさえ、描く角度やちょっとした動作で感情の機微がもたらされている。
 その他のクリエイター陣にしてもビッグ2(DC/Marvel)からのメジャー作品に携わったことのあるような者はぱっと見当たらないものの、勃興中の新しい才能であったりインディーズ系からコツコツと積み上げた経験の持ち主であったりといったいぶし銀のメンバーで構成されており、本作を『SAGA』などと比べても全く遜色ないファンタジー作品に仕上げている。


分冊キンドル版: Shutter #2

 内容に関しては、幼い頃に好きだったジブリやディズニーといったものを一緒くたにまとめて大人の物語にしたとでも言おうか。とにかくダイナミックでファンタスティック。
 物語の焦点は無論主人公であるKateに定まっているものの、彼女が活躍する舞台を転々とするに従い次々と新しいキャラクターを紹介しては、そのキャラクターとその周囲を取り巻く世界をもしっかり描いているため、層を重ねるかのように物語の厚みが増していく。
 個人的に#3のオープニング時の見開きで描かれるヤモリテロリストのシーンとか中々うまいな、と。ただの遊びで終わらずに後のストーリーにも(カモノハシの再出とか)しっかり響いてくるような辺りがうまいなと感心させられた。
 何が起こるかわからない物語と、読んでいて安心できるキャラクターが見事に共存している。

 創立以来、一貫してクリエイターに制限を課さない自由な作品発表の場を提供してきたImage Comics。この会社がなければ『WALKING DEAD』のようなメガヒット作品も『SEX CRIMINALS』のような一風変わった作品も生まれていなかっただろう。現在、Imageほどバラエティに富んだラインナップを提供している出版社は他にあるまい。
 1人の読者としてImage Comicsに関わる全てのスタッフ・クリエイターへ感謝すると共に、今後もたくさんの想像に満ちた作品を期待したい。


原書合本版(Amazon): Shutter 1