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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

DIVINITY (2014, Valiant)

先日紹介した『JSA: THE GOLDEN AGE』をWW2終戦直後の『WATCHMEN』と形容したが、本作のDivinityは21世紀版Dr.Manhattanとでもいったところだろうか。


原書キンドル版(Amazon): Divinity #1 (of 4): Digital Exclusives Edition

 冷戦時代。米国との宇宙開発競争に勝利しようとするソ連は極秘裏に3人の優秀な人材を”宇宙の果て”へ送り出す。その1人であるAbram Adamsは辿り着いた先で未知の存在と接触したことにより時空の概念を越えた存在”Divinity”となる。変容した彼は愛する女性、そしてまだ見ぬ自分の子のいる地球を目指すが、地球ではAbramsらが送り出されてから既に数十年近い時が経っていた……。

 まずValiant Comicsの紹介を軽く。
 最初にこの出版社が誕生したのは94年。当時はJim LeeのWILDSTORM系作品やTodd McFarlaneの『SPAWN』なんかの世にいうGrim&Gritty(『意地悪で意固地』?)な作品がバカ受けしていた時代。当初MarvelやDCがそういう作風に否定的だったこともあってImageなどクリエイターの新たな作品提供の場を生み出す契機にもなった。
 Valiantもそんな波に乗って70年代から80年代にかけてMarvelの編集長を務めた(後、紆余曲折を経てクビにされた)Jim Shooterらが立役者となって創設された会社。現代に蘇ったローマ帝国時代の蛮族野郎がエイリアンスーツを身に着ける(このごちゃ混ぜ具合がいかにもThe90’s!)『X-O MANOWAR』やX-menをパンクにした『HARBINGER』など数多くの人気作で一世を風靡した。
 だがそういった過激な作風というのでありがちなのが短期的には人気が出るものの、長期的な視野ではうんざりされるのが関の山と言うか。

 WildstormがDCの傘下に入って『AUTHORITY』みたいな作品を生み出したり、MarvelもMarvel Knightsレーベルで立て直しを図る中、Valiantは徐々に勢いを失い2004年に一度経営破綻する。
 Valiant Entertainmentと名を改めた会社が世界観を完全にリブートして再出発を図ったのが2012年。当時は有象無象に埋もれるかと思われていたもののMarvelやDCなど第一線で活躍するクリエイターを起用した『X-O MANOWAR』や『ARCHER & ARMSTRONG』が単なるノスタルジア以上の高評価を得、以降現在まで良い流れを作り出している。

 私も過去にValiantの作品はいくつか読んできたものの、どうも性に合う作品がなくて度々落としてきた中、始めて大当たりだったのが本作というわけで。
他作と異なりDivinityは90年代のリバイバルキャラというわけでもないからか、世界観に関して私程度の知識量でもそれほど苦には感じませんでした。多分気になったところを軽くWikiするだけで予備知識的には十分かと。

 ”時間”の概念を超越したDivinityという存在がとても丁寧に描かれている。良くも悪くもこういう何でもできちゃうキャラクターはそれこそDr.Manhattanをテンプレとしたような「無関心な神」として描かれるのが大概。
 Divinityもそこから完全に脱離しているとまでは言わないものの、彼の面白いところはAlan Mooreが『WATCHMEN』の第4章で描いたような「迷える半神半人」的なDr. Manhattanを思わせるところだ。力を使うことに少しも躊躇がない一方で、人間的な感情に乏しくないこういうキャラって案外いそうでいない。
 超人となった自らのアイデンティティを探す過程で”取り敢えず”本作の結末に辿り着くDivinityだが、彼の物語はこれで終わったわけではない。むしろこれは単なる始まりの物語だ。既にⅢまで進んでいる本シリーズがどこまでAbram Adamsという人物を掘り下げていくのか、じっくりと眺めたい。


原書合本版(Amazon): Divinity

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