VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

LAZARUS VOL.2: LIFT (Image, 2014)

 引き続き新自由主義の行き着く先を描いた近未来ノワールLAZARUS。前巻がファミリー内外のおおまかな構図や階級区分など本シリーズの世界観をマクロ的に描いたものであるとすれば、本巻はファミリー支配下でしのぎを削りながら生きる人々をミクロ的に描いたものといったところ。
 Carlyle家周辺の物語は一旦Foreverの少女時代に場を譲り、下層民のBarret一家の旅路がメイン。この家族、今後も物語に絡んで来るのかしらん。


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 人々が宗教や民族でなく経済で分かれるようになった近未来。世界を支配するファミリー達がそれぞれの技術の粋を集めて仕立て上げた最強の人材”Lazarus” — その1人であると同時にCarlyle家の末娘であるForeverは何者かから送られてきた『これはお前の家族でない』という旨のメールに困惑する。
 一方その頃、Carlyle家の長男であるMalcolmは領地の有益な人物を選抜するLiftという催しを開くことを決める。農地を洪水で流されたとある下層民の一家は一般民に召し抱えられることに望みを託すが、LiftにはCarlyle家の支配に反目するテロリストも潜伏しており……。

 クリエイター陣は前巻に引き続きライターのGreg RuckaにアートのMichael Lark、それにカラーのSanti Arcas。インクに前巻#3からサポートで入ったBrian Levelが同じく続投。Wikiを見るとLevelは次回から別のインカーに変わるそうなので、さてこのじっとりとした暗さを今後も醸し出せるかというのは注目したいところ。

 本巻では”リアリティ”が作品の大きな要となる。
 かなーり前に「結局フィクションとノンフィクションって水と油だよ」って話をしたけれど、あの時語った作品がその失敗作だとすれば今回は比較的成功した例と言えるんじゃなかろうか。

 本作に登場するキャラクターは大まかにCarlyle家や他のファミリーを始めとした1%の人間と、その支配下で貧困に喘ぐ残りの99%とに分かれる。1%側に関しちゃリアリティもへったくれもありません。何しろ多くの読者は現代の1%にさえ共感できないんだし。どんなに彼らのライフスタイルを丁寧に描いたところでそこにリアリティを見出だせる読者は少数派だろう。


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 むしろこの世界にリアリティをもたらしているのはBarret家のような99%側に属する者達の方だ。彼らの旅路は一応ストーリーみたいなものはあるもののどちらかといえばシミュレーションとしての傾向が強い。「作品世界における平均的なライフスタイル」を描いているのはまず間違いなく彼らの物語だ。同じく彼らの直面する問題は難民や移民という今まさに我々の世界で起こっている社会問題のアレゴリーとして見ることもできる。
 そして、こうして地の足の着いたBarret家の面々が物語終盤でForeverと邂逅することにより彼女の(というか作品全体の)物語にリアリティがもたらされる。

 そう考えると本世界観の”1%”と”99%”という区分は、前者がフィクションとしてのストーリーを、後者がノンフィクションとしてのストーリーをと役割分担することにより結果として「リアリティのある物語」を生み出すことに功を奏している。
 公式のような物語の組み立て方だが、社会科学などに対する豊富な知識があって始めて可能な創作法であるため決して侮って良いものではない。
 物語を作る者は様々な分野に対する専門家になる必要があるというのは多くの創作論で言われていることだが、本作を読めばそれがいかに真実であるか理解できるだろう。
 今後このリアリティが物語にどんな形で作用していくのか注目していきたい。


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