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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

SECRET SIX VOL.1 VILLAINS UNITED (DC, 2005-07)

 正義の側に立って人々を守る存在のことを我々は”ヒーロー”と呼ぶ。
 己が欲するところに従い他者を傷つける悪は”ヴィラン”と。
 しかし、その境界線は極めて曖昧だ。多くの者は状況に応じて2つの間を行ったり来たりする。
 結局のところ”自分”と”他人”なのだろう。


原書合本版(Amazon): Secret Six Vol. 1: Villains United

 スーパーヒーロー打倒のため一致団結することにしたLex LuthorやBlack Adamらスーパーヴィランの面々。彼らは他のヴィラン達を続々と歓迎する一方、招待に応じない者は見せしめのため徹底的に痛めつけるという態度を取っていた。
 彼らに反旗を翻す謎の人物、通称Mocking Birdは同じく長いものに巻かれるのを良しとしなかった6人のヴィランに手を差し伸べるが……。
 これは”仲間”になることも”敵”に回ることもできない”はぐれ物達”の物語である。

 Gail Simoneによるライティングの本作は連載当時もとても好評だったのでいつか手を出したいと思っていたものの、遂に機会に恵まれず。この度、合本の新装版が出たのを機に入手した次第です。
 合本の名前こそ『SECRET SIX』であるものの、構成はVol.1の副題でもある『VILLAINS UNITED』#1−6、『VILLAINS UNITED: INFINITE CRISIS SPECIAL』#1、そしてようやく『SECRET SIX』#1−6となっている。先の2つは2005−06年のメガ・クロスオーバー『INFINITE CRISIS』からのスピンオフであるため、そちらを前提として踏まえていないと物語の核心部分が分かり難いかもしれない。なお、今巻に収録されている『SECRET SIX』はミニシリーズ版であり、Vol.2から収録される連載版では再度#1から仕切り直しとなっているが、多少の時系列的なギャップを度外視すれば基本続き物として読んで問題ないかと。

 ヒーローのコミュニティからあぶれた者達がチームを結成するというのはたまに見るものの、ヴィランのコミュニティに溶け込めなかった奴らが手を組むというのはありそうで意外となかったかもしれないコンセプト。一般的なヒーロー物ともピカレスク物とも異なる面白みがある。

 本作について間違えてはならないのが、ここに出て来るCatmanやDeadshotなどといったキャラクター達が必殺仕掛人などのような「正義をなすため悪に手を染める」輩とは異なるという点だ。
 彼らはチームの仲間同士として結束しつつも、どいつもこいつも隙あらば平然と裏切ってみせるし、些細なことですぐに殴り合う。結果としてヴィランの野望を挫きヒーロー側に与するものの、肝心の決戦時には「お互い勝手にしろ」と言わんばかりの態度で立ち去る。
 彼らはヒーローのなり損ないなどではない。
 あくまで悪人だ。
 彼らの行為は良く言えば自由気ままだが、悪く言えば身勝手と言える。
 そしてその身勝手なほどの自由が本作における最大の魅力だろう。2016年に公開された『SUICIDE SQUAD』は非常に賛否の分かれる作品となったが、これにファンが求めていたのはこういうノリだったのかもしれない。

 以前『TEEN TITANS』の記事でだったか、ヒーローとしての道を選ぶことの強さに関して言及したことがある。しかし、ヒーローにはたくさんの仲間という拠り所があるのも事実だ。そういったコミュニティのセーフティ・ネットに背を向けて我が道を貫くことにはまた別の強さが求められる。
 本作に登場する面々はその強さを備えている者達として、時にヒーロー達よりも気高く見える。