VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

VAMPIRELLA MASTERS SERIES VOL.1: GRANT MORRISON & MARK MILLAR (Dynamite, 2013)

 アメコミの世界で1つの時代を築き今もって独特のポジションを保持するキンキー&ダイナマイトなデンジャラスヒロイン。Vampiはその代表格とも言うべき存在。ボインバインな彼女が表紙で挑発的なポーズを取るこの合本も産み落とされた時代が違えば間違いなく各種団体から袋叩きにされていたでしょう。正直、私も表紙にGrant Morrisonの名が冠されてなければ購入してなかった。
 ところが読んでみるとあら不思議 — やだ、これ面白いじゃない。


原書合本版(Amazon): Vampirella Masters Series Vol. 1: Grant Morrison

 吸血鬼特有の能力と血への渇望を有しながら、その弱点は有さないヴァンパイア・ハンター Vampirella — 紆余曲折を経て死から舞い戻ってきた彼女は以前にも増した勢いで吸血鬼どもを血祭りに上げていく。そんな中、世界を支配する足がかりとしてまず米国の裏社会に狙いを定めた吸血鬼達の企みに気付いたVampirellaはマフィアのボスが住む館に潜入するが、そんな彼女の前に謎の男Von Kreistが立ちはだかる……。

 1969年にホラー系コミックを専門に刊行していたWarren Publishingから初めて世に送り出されたVampirellaはCREEPYやEERIEといったホラーアンソロジーと同じようなスタイルで刊行されつつ、各作品が完全に独立しているそれらと異なり彼女が主役を張ることで(当時の欲求不満な青少年にドンピシャだったというのもあり)好評を博した。しかし10年以上に渡って#112まで刊行されたオリジナル・シリーズはWarrenの倒産とともに一旦終結。ホラー系コミック全体が下火になりつつあった影響もあり、その後あっちの出版社からこっちの出版社へと渡り歩きながらだが何とか継続を保ったVampirellaはやがてそういった行き場のないキャラの扱いに長けているDynamiteに版権を買われ現在に至る。

 上記のような変遷を辿っているためVampiはそのオリジンも何度か改変されており、当初は「血だらけの惑星Drakulonに住む吸血鬼エイリアンの1人」だったのがいつからか「アダムの最初の妻リリスの娘」になり、更にエデンがどーの地獄がどーのとなって今では何が何だかわからないような状態となっている。この記事を書くにあたって私もついさっきWikiを確認したものの、コロコロ変わりすぎて途中からどうでもよくなりました。
 まあ逆を返すとそんなもんだから出自とか全く知らないで読み始めても全然平気なわけで。多分「Drakulon出身」+「リリスの娘」+「ヴァンパイア・ハンター」って点だけ踏まえておけば十分かと。まあ、要するに女版Bladeですわ。
 
 で、実際の内容ですが記事の最初にも述べた通り意外や意外、下手にしんみりさせるような描写も少なければ派手な吸血鬼アクションが満載でかなり満足度の高い作品でした。Morrison好きな一方でMillarが苦手な私は当初本作を読むにあたって不安要素がないといえば嘘になるのだけれど、本作に限って言えばMillarの食って掛かるような言い回しなどは作品を良い意味で引き締めており功を奏していたと言える(それにしても本作の敵であるVon Kreistってデザインがどう見てもWANTEDのMr. Rictus……)。
 今までは食わず嫌いで特に気にしたこともなかったVampirellaですが、これを機に少し手を出してみようかと思うと同時、Mark Millarに対する認識を改めるきっかけにもなりました。