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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

JACK KIRBY’S OMAC: ONE MAN ARMY COPS (DC, 1974-75)

 印象的な髪型はあくまで現代に蘇った軍神アレスの象徴であってモヒカンなどではないのよ。格好いい筈なの。


原書合本版(Amazon): Jack Kirby's O.M.A.C.: One Man Army Corps

 近未来。世界から一切の暴力を排除すべく活動する国際団体Global Peace Agencyは、最新科学を私利私欲のために利用する悪を懲らしめる単独武装軍団 — 通称OMAC(”One Man Army Corps”の略) — その依代として純粋無垢な青年Buddy Bakerを選出する。科学の粋を結集した衛星Brother Eyeに肉体と精神を改造された彼は、ロボットや遺伝操作生命体などを使って世界を支配しようとする悪人達を追い詰める!

 はい、『INFINITE CRISIS』ではBatmanの開発した超人殲滅用ロボとして、New52では未来世界をディストピアしちゃう悪の人工知能として、色々な形に設定を捻じ曲げられてはKirby原理主義者からお叱りを受けているキャラクターO.M.A.C.でございます。
 しかし原典を読んで色々納得。時代性によるものか倫理的に不安な描写が少なからず見受けられるものの、現代にうまくアップデートできたら物凄く面白くなるであろう魅力的なコンセプト。
 
 クリエイターはアメコミを読む者ならその名を知らぬ者はいないと言われる王者Jack "The King" Kirby。MarvelでStan Leeと共にFantastic Four、X-men、Hulkなど数多くのキャラクターを生み出すと共に、アーティストとしてその独特の絵柄と大胆な構図はその後に続く数多くのクリエイターに影響を与えた(共同原作者として彼とLeeの分担がどんな風だったかについては色々きなくさい噂があるけれどここでは割愛)。
 Marvelを離れた後DCへやってきた彼はここでも現代の新たな神々Fourth Godsの面々やカルト的な人気を誇るKamandiなどを生み出し、精力的なクリエイター活動を続けた。本作もそんな彼がDCで生み出した作品の1つで、隠れたファンがたくさんいる模様。……とはいうものの連載当時はどうもあまり人気が振るわなかったようで僅か8号で打ち切られており、そのラストもかなり端折った印象が否めないものとなっている。

 それでもSF冒険活劇としてはまず間違いなく1級作品。バラバラの状態で箱詰めされた美女ロボットがページにでかでかと描き出されて読む者の度肝を抜く最初のページから、目まぐるしいスピードで手を変え品を変えアクションが続く。科学技術に関しても現代の科学を先取りしたようなものが数多く見られ(#7とか久々に『ジュブナイル』思い出したよ)、Kirbyの先見性が窺える。
 
 でもね。
 何の承諾もなく1人の青年を精神肉体共に改造してしまうってどうなんだいGPAの皆さん。というか「我々は一切の暴力を許容しない。だからOMACを使う」って、丸々1個の軍隊と戦わせても力を持て余すような存在を味方につけといて平和団体も糞もあったもんじゃないがな。
 Brother Eyeにしても誰が管理してるわけでもなさそうなら、(悪人であっても)躊躇なく人に攻撃加えるし、一歩間違えたらあっというまに黙示録できるポテンシャルの持ち主と言えるんじゃないでしょうか。

 色々な問題も見出だせる作品には違いないものの、原典としての面白さは十分な本作。1つの作品として読むのは勿論、後世のクリエイターがどのように料理したかを深く探るための”素材”として読むなんて方法もありなんじゃないでしょうか。いや、皮肉じゃなくて。