VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

FANTASTIC FOUR VOL.1 THE WORLD’S GREATEST COMIC MAGAZINE (Marvel, 1961-63)

 現在の巨大樹たるMarvelユニバースにとって、戦前の Human Torch や Captain America などが種だとすれば、その最初の芽は Fantastic Four であると言っても過言ではないでしょう。何十年も続いている作品であるためその歴史の全てを網羅することは至難の業でも、原点くらいは読んでおきたいところ。


原書合本版(Amazon): Fantastic Four Epic Collection: The World's Greatest Comic Magazine (Fantastic Four (1961-1998))

 時は1961年、米国とソ連の宇宙開発競争が苛烈の一途を辿る中、焦りに駆られた天才 Reed Richards 博士はまだ十分に研究が済んでいない新型ロケットで一か八かの賭けに出ることを決意する。彼と共にロケットへ乗り込んだのは3人 — 彼の幼馴染である才媛 Sue Storm、その彼女の弟で血気盛んな若者 Johnny Storm、そしてReedの学友でパイロットの Ben Grimm。彼らは警備の目をかい潜りロケットに乗り込むと宇宙に飛び出すが、その途中で地球の周囲を取り巻く放射線帯に巻き込まれてしまう。どうにか地球に帰還を果たした彼らは自分達の肉体に異変が起こっていることに気付く — 1人は変幻自在の体に、1人は透明な体に、1人は炎に包まれた体に、1人は岩石のような体に。4人は共にこの新たなる力で世界に貢献するべくチームを設立し、数々の冒険に繰り出す。

 最近 Marvel では過去作品をリーフ15〜20冊分詰め込んだ合本として刊行するのが流行らしく、中でもシルバーエイジの作品群は EPIC COLLECTIONと 冠されて続々刊行されている。今回紹介する合本もその1つで、 FF のシリーズ開始から#18までを収録。以前 Marvel から刊行されていた ESSENTIAL 合本も安いためあれはあれで重宝していたものの、作品の質で言うならばアメコミの大きな特徴たるカラーがしっかり描かれているこちらの EPIC 合本の方が上。4人のユニフォームの青を始め、 Human Torch の赤、 Thing のオレンジ、 Doom の緑など ”The King” の称号を有する Jack Kirby の色彩バランスの高さを窺うことができる。

 ストーリーに関して言及するならばシリーズ開始当初から中盤あたりまではかなり手探り感が強く、登場人物の性格や互いの関係性は勿論のこと、物語全体の雰囲気なども話によって振れ幅が大きい。現在の FF を思わせる物語に形が定まってくるのは本合本の終盤あたり — 話数で言えば Hulk がゲスト出演する#12あたり — からかと。純粋な冒険活劇の話も面白い一方で、Reedが株に手を出して破産した FF が Namor がプロデューサーを務めるハリウッド映画に出演するなんて若干カオスな匂いのする回も。
 
 さて、 FF の最大の魅力がチームの4人を始めとした数多くのキャラクターであることは誰もが認めるところだけれど、本巻を通して読むと改めてその巧みさが際立って見える。
 上で述べた通り大まかなキャラクターの性格や能力は決まっていたものの、シリーズ開始当初の FF は現在とかなり異なる。例を挙げるなら Johnny と Ben の関係性であるとかは現在知られているよりかなり険悪だったし、 Ben の容姿も現在よりもかなり醜悪だった。
 しかし、話数を重ねるに従い、いがみ合ってばかりいた2人は Namor の出現という共通の敵の出現によって気が合うようになったのを機に少しずつ関係が改善していき、 Ben も彼をその岩石のような容姿で愛する Alicia Masters が登場したあたりから少しずつ顔も人らしく、体型も現在の雪だるま型に変わっていく。
 本作で Jack Kirby と Stan Lee はただ魅力的なキャラクターを次々と生み出しただけではなく、それら新しいキャラクターを使って既存のキャラクターに厚みを加えていって読者に好かれる現在の形に仕立て上げていった。
 FF が少しずつ”チーム”として、”家族”として結びついていく様に感服の一言な合本でした。少し値が張る合本だけど、財布と相談しつつせめて Lee と Kirby で制作している分は全部揃えたいなあ。

追記:後で見てみたら別にシルバーエイジのものでなくともEPIC COLLECTIONとして刊行されているようです。要するに一昔以上前の作品をたくさん詰め込んだものと思って頂ければ良いかと。