VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

SECRET SIX VOL.2: MONEY FOR MURDER (DC, 2008-09)

 1人は最新科学で全身を武装したスーパーヒーロー。
 1人は古代から伝わる魔法のマントに身を包んだスーパーヴィラン
 どちらも手から出すのは似たような熱戦。
 科学と魔法が何だって?


原書合本版(楽天(Amazonは下に)): Secret Six Vol. 2: Money for Murder [ Gail Simone ]

 ヒーローでもなければヴィランの輪にも加わることができないオッドボールズでミスフィッツな6人組の活躍を描く本シリーズ。
 本格連載が開始してからの内容を含んだ本巻はまず、ある重大なアイテムを所有する人物の護送を請け負ったチームが、それを阻止せんとするヴィジランテや謎の人物に雇われたヴィラン達をやり過ごしながらSan FranciscoからGothamを目指すロードムービー的ストーリー『UNHINGED』編と、奴隷を監視する傭兵として雇われた彼らが雇い主の歪んだ野望を知り対立する『DEPTHS』編、それにチームのもっと日常的な活躍に焦点を当てたいくつかの1話完結物で構成されます。話のいくつかは『BATMAN R.I.P』や『AMAZONS ATTACK』など、当時DCで展開されていたイベントを反映しているので多少あらすじをWikiで確認する必要があるかも(実際に作品を読む必要まではないかと)。

 前回は『INFINITE CRISIS』が物語に大きく絡んできたこともあって、数え切れないほどのヒーローやヴィランが駆け抜けるように登場しては消えていきましたが、今巻はもう少し地に足が着いているというか、前回みたいに烏合のヴィラン衆みたいな描写もある一方で、Gothamの暗黒騎士やらAmazonの姫様なんかもゲストらしいゲストとして登場。

 チームのメンバーは前回から引き続きScandal Savage(不死者Vandal Savageの娘で暗殺術の達人)、Catman(名前や姿も蝙蝠男のパクリだが身体能力も彼に匹敵)、Deadshot(映画でお馴染み百発百中の狙撃者)、Ragdoll(骨があってないに等しい軟体男)に加え、Batmanの宿敵であるBane、それに本作オリジナルキャラであるバンシー(アイルランドに古くから伝わる女の亡霊)のJeanette。前巻でRadgollに裏切られてしまったMad Hatterも愛憎入り混じった感情を抱えながらチームに付かず離れず暗躍している模様。

 本巻で個人的にとりわけ面白かったポイントは『UNHINGED』編において話の中心となるアイテム(ネタバレ防止のため回りくどい言い方になってます、あしからず)。DCやMarvelといった広大な世界観の何でもありな面を上手に使ったなという印象を受けました。
 科学に魔法に宇宙の神秘、さらには神話的奇跡までもがあり得るこの世界観で「魔法が使えるスーパーヒーロー」と「科学を駆使するスーパーヴィラン」が対決するだけというのは余りに勿体無い(というか、魔法の力だろうが科学の結晶だろうが手から出てるのは同じ熱戦だろ?)。もっと想像力を働かせなければ、何でもかんでもお空にぽっかり開いた穴から巨大な光線が地上に吐きかけられるようなクライシスばかりになってしまう。

 今回登場したアイテムはそういうのとは異なり、比較的現実感のあるチームの中にぽんと誰が見ても「うん、科学じゃなくてオカルトだよね」と頷ける品が放り込まれることで意外性が生まれているのが大変好印象。世界を破滅させる脅威などでは決してないものの、誰もが喉から手が出るような品である点も、本シリーズのスケールにぴったりと言えるかと。
 ここでArthur C. Clarkeの三原則とやらについてあれこれと議論するつもりはないものの、ただフィクションで科学と魔法を区別するのであれば、それ相応の工夫というか両者の境界は必ずあるべき。
 本巻はそういう点でも手堅い面白さを備えた逸品。


原書合本版(Amazon): Secret Six Vol. 2: Money For Murder