VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

X-MEN: STORM (Marvel, 1996)

 やたら飛び出す光の玉。無駄にラインの入ったメタルプレート。舞台は異次元、仲間はカラフル、基本としてモノローグは三人称。コテコテした感じがいかにも 90s な作品。
 Warren Ellisがライティングをしているというだけで本作を購入した私は前後関係がいまいちわからないものの、Apocalypseに関する言及があったりBeastがDark Beastと入れ替わったりしているのでGrant MorrisonによるNEW X-MENが始まる少し前辺りかと。
 まあ、別に時代がわからなくとも十分楽しめましたけどね。


原書キンドル版(Amazon): Storm (1996) #1 (of 4)

 かつて地下に住むミュータントのコミュニティ Morlocks を導き、現在は X-men のリーダーを務める Ororo Munroe a.k.a Storm — だが、つい最近自爆テロを食い止めるため1人のミュータントを手にかけてしまった彼女は強い自責の念を覚え、自らの判断力についても自信を失っていた。 
 そんな中、仲間で友人のCableと会話をしているうち下水道に地上の光を届けることを思いついた彼女は早速それを実行に移そうと Morlocks 達の住んでいた場所へ赴くが、そこで何者かから襲撃を受ける。事態を察知して現場へいちはやく駆けつけたCableがそこで見つけたのは、Stormと思しき女性の遺体だった……。

 アートは現在女性キャラクターを描かせたら右に出る者はいないと謳われるTerry Dodson。今でこそ美しさと可愛さが共存したアートに熱狂的なファン・ベースのある彼ですが、本作の頃はいかんせんまだデビューしたてで不慣れな感じは否めず、90年代特有のべっとりとしたインクも相まって少々濃いめな絵柄です。1つの過渡期として見るのがちょうど良いかと思われます。

 X-menに限らずAvengersやJustice Leagueといった長期にわたるシリーズでなおかつキャラクターが豊富な作品というのは、時代によって各々の登場人物に対するスポットライトの当て方や光量が変わってくるため、好みのキャラクターでその読者がいつ頃からそのシリーズを読んでいたのかがよくわかる。
 なので主に2000年代のNew X-menあたりからこの世界に入った私にとってはStormってファンが多いのは知っているものの正直ピンとこないキャラ。こうして彼女を正面から見据えた作品というのは実のところ初めてだったりします。

 というかStormってCyclopsに代わってX-menのリーダーになるくらいだからポテンシャルはかなり高い筈なのに何となく掴みづらいキャラクターだと思うんですよね、正直。
 経歴だけ見てもアフリカのスラム出身でその能力から女神扱いされるまでに至り、一時はT’Chala(a.k.a Black Panther)と結婚して女王の座にまで上り詰めてとかなり振れ幅が大きいし、能力にしても天気を自在に操れるという割にコミックの中ではもっぱら空を飛んでるか手から雷放ってるか、あるいはたまに雨を降らせる描写しかない。チームの中における立ち位置もJeanのような母性キャラでもなければJubileeみたいな娘っ子でもないし、リーダーとしてもCyclopsと比べると今ひとつ物足りない……うーん。

 と、まあ悩みを抱えつつ本作を開いたのところ、開始時はしっとりうっとりしていた彼女が身勝手な周囲に振り回された果て、最後は敵に一杯食わせる様子を辿っている内に1つの結論へ辿り着きました。
 つまり、StormはX-menの緋牡丹お竜なのです。
 ……いや、冗談抜きで。驚くほどStormって藤純子。『緋牡丹博打』とかで描かれる乙女と母の間にある微妙な時期の女性なのだと考えると色々と合点がいく。女性という要素を省いて言い直すなら青年と大人の境目といったところ。学生時代に1人はいたであろう大人びた同級生などと同質の魅力をOroroは備えている。
 そんなわけで「Stormには姉萌えが有効」という足がかりができたことを糧に今後の彼女の活躍に期待する所存でございます。


原書合本版(Amazon): X-Men: Storm by Warren Ellis & Terry Dodson