VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

AUTHORITY: UNDER NEW MANAGEMENT (DC/WILDSTORM, 2000)

#12でJenny Sparksの死により有終の美を飾った新時代の攻性スーパーヒーローチームAuthority。当初はこの後ライターがMark Millarになってからどんどんひどくなると聞いていたため自分の中ではここでシリーズ完結とするつもりだったものの、Warren Ellisのインタビュー本でその後しばらくはEllisがストーリーに関与していたと知り。さらにはGrant MorrisonのSUPERGODSを読み返したところMorrisonも関わっていたどころか内1話はゴーストライティングしていたと知り。両ライターにぞっこんの私は読まざるを得なくなりましたとさ。


原書旧版合本(以前紹介したVOL.1と前半被ります。新装版VOL.2は下に掲載)(Amazon): Authority, The: Under New Management (Authority (Graphic Novels))

 20世紀の終焉と共にこの世を去ったJenny Sparksに代わり、新たにJack Hawksmooreをリーダーに迎えて「世界を良くする」ための活動を継続するAuthority。難民を救済したり独裁政権を崩壊させたりと積極的に政治経済にも介入する彼らに対し、政治家達は危機感を募らせる一方で、人々は概ね彼らを受け入れているようだった。
 そんな中、死んだ筈のJenny Sparksが実は21世紀を迎えて新たな肉体に転生しただけだと推測したDoctorはその新生児がシンガポールにいると知り病院へ向かう。だが”21世紀の精霊”であるその子供を探しているのは彼だけではなかった……。

 とは言うものの。自分の中でベストのスーパーヒーロー作品のイメージを汚されるとわかっていながら(悪い言い方と受け取る方もいるかわからないけれどこの場合は多分これが適当)地雷を踏みにいくような馬鹿をするつもりもないので、ネタバレ(という現代ならではのこれまた地雷)に触れないよう入念にリサーチをした結果、直近に刊行されたHitch&Ellisより後の物語を全て含む合本ではなく、Mark MillarとFrank Quitelyによる最初のアークのみを含む旧版の合本を選ぶことにした。これもアメコミの1つの読み方よん。

 本アークは突き詰めれば「Mark MillarがJack Kirbyに喧嘩を売った」といったところだろう。敵役がAvengersなどのMarvel系ヒーローのパロディであることといい、裏で手ぐすねを引いている黒幕が”Jacob Krigstein”なんてJack Kirbyの名前を少しもじったものであることといい、そのことは間違いない。
 こういったパロディが読む者の神経を逆撫ですることさえ度外視すれば(WANTEDなどのことを考えてもこういった発想はMillarのものだろう)それなりに読むことはできるし、面白いアイデアもあちこち見受けられる。ただこのAuthorityがEllis&Hitchの作ったチームを引き継いでいるかと問われれば答えは「否」だ。「国際政治へのラディカルなアプローチ」や「キャラクターの非人道性を示すためのツールとしてのレイプ描写」などといった記号は、本作が良くも悪くも”AUTHORITYの続編”ではなく後にMillarが制作するULTIMATESやCIVIL WARも含めた”MILLAR WORLDの原型”であることを示している。

 Ellisが後継ライターとしてMillarを抜擢したことが過ちだったとは言わない。EllisとMillarがAUTHORITYで世に送り出した新たなスーパーヒーロー像は余りに革新的であり、それを超えるとなればこの程度の変化は”最低限”必要なものだろう。
 だから後は読む者それぞれがこの変化を受け入れるか受け入れないかだ。
 作品の受け手である読者も時にはプロアクティブな意思決定を迫られるということだろう。


原書新装版合本(Millar&Quitely以降の全てを含む)(Amazon): The Authority Vol. 2