VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

SECRET SIX: VOL.3 CAT’S CRADLE (DC, 2009-10)

 何でもできるからこそ何をすれば良いのかわからなくなることもある。


原書合本版(Amazon): Secret Six Vol. 3

 SECRET SIXの結成時からのメンバーであると同時に、かつて犯罪者のみからなる政府の秘密部隊Suicide Squadにも所属していたガンマンFloyd Lawton a.k.a Deadshot — SSを指揮するAmanda Wallerは一度チームを抜けた彼を再び引き入れようとSecret Sixに攻撃を仕掛けるが、折しも謎の黒いリングにより蘇った屍者達が次々と生者に襲いかかり世界はパニックに陥っていた。(『DANSE MACABRE』編)
 BLACKEST NIGHT事件が一段落してしばらく経った頃。Cheshireとの間にもうけた息子を人質に取られたThomas Blake a.k.a CatmanはSecret Sixの他のメンバーを殺害するよう命じられるがこれを拒否する。犯人達に復讐すべくチームを抜けた彼を、他のメンバーたちは追いかけるが……。(『CATS IN THE CRADLE』編)

 正義の道を全うすることも悪の道を邁進することもできない6人の”はぐれ者”からなるパッチワーク・チームの活躍を描くシリーズ第3巻。本巻では複数号にまたがる大きなストーリーアークとしてあらすじの『DANSE MACABRE』編と『CATS IN THE CRADLE』編、その他にBlack Aliceがチームにおしかけてくる話や、西部開拓時代のエルス・ワールドにおけるチームの姿を描いた話が1話完結として盛り込まれている。
 本巻の主なメンバー編成は既出のDeadshotとCatmanに加え、体の関節が自由自在のRag Doll、死を招くバンシーのJeannette、他人のオカルト能力を借りることのできるBlack Alice、そして新たにチームのリーダーに就任したBaneとなる。ただ、前巻ラストで(勝手に彼女を娘扱いし始めた)Baneによりチームから外されたScandal Savageも普通に登場するので実質7人とみて問題ないかと。

 本巻ではメインのライターを引き続きGail Simoneが担うのに加え、かつてSUICIDE SQUADでもDeadshotの活躍を描いてきた名匠John Ostranderがゲスト・ライターとして参加する。複数のライターが参加するとありがちなのはキャラクターのブレだが、ここではそういうことがなかったのは大変好印象。Ostrander時代のSUICIDE SQUADにも手を出してみようかと唆られた。

 ”一線を越える”という言葉があるが、このシリーズが読むものをハラハラさせるのは、そのいわゆる”一線”というやつの位置が非常に曖昧だからだろう。ヒーローが主人公の作品では不文律となっている拷問や殺人などといった行為が本作では平気で行われる一方、メンバー達には確かに各々の倫理観が存在する。
『CATS IN THE CRADLE』編ではこれまで比較的ヒーロー達とかなり近い位置にあったCatmanの”一線”がかなり揺らぐことになると共に、一見すると倫理とは無縁と思われたRag Dollなんかの”一線”も浮かび上がる。
 ”一線”の位置がかなり曖昧なことの軽さをウリにしているのはDeadpoolやHarley Quinnだが、本作の6人は逆にそこから来る重さを魅力にしており、他に類を見ないドラマを演出している。
 むしろ悪の側に立っているからこそ重んじる倫理というのもあるのだろう。