VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

VOODOO VOL.1: WHAT LIES BENEATH (DC, 2011-12)

 個人的にはちょっと注目してみたいマイナーキャラ。

(カバー画像とAmazonリンクは下に掲載)

 とあるストリップ・クラブ。トップの座に着く者へ送られる Voodoo という源氏名をほしいままにした1人の女が今日もステージで躍る。
 だがその日の客はいつもと違った。相棒の女と意味深な言葉を交わした後、 Voodoo をプライベート・ルームに呼んだ男。やがて男が彼女を捕らえに来た政府の人間であることを知ると、彼女はグロテスクな姿に豹変して襲いかかる……。

 今でこそ REBIRTH でウハウハ状態の DC — ほんの1年前まではネットでもう駄目だ駄目だと叩かれまくっていたのがこれほどの上昇気流に乗るとは誰が予想できたでせう。
 そんな今では DC のプチ暗黒時代とも囁かれる New 52 ですが全体的な方針はともかく、1つ1つの作品を見る限りでは結構粒揃いだったのではないかと思っていたり( New 52 に関して Todd McFarlane だったかが「1月に52冊も新シリーズを作らないで数ヶ月に分けて刊行すりゃいいのに」と言っていたがそのとおりだと思う)。
 本作もそんな埋もれてしまった良作の1つと言える作品。
 
  New 52 以前の Voodoo は Wildstorm レーベルは WildC.A.T.S. のサブキャラで、ソロタイトルには(当時まだ DC とそこまでこじれていなかった) Alan Moore がライターを務めるなど中々贅沢な扱いを受けていた。
 どういう経緯で彼女が New 52 においてソロタイトルを獲得するに至ったのかは定かでないものの、今回の新シリーズは前作のオカルト要素をあらかた取り除き、 Daemonites なるエイリアンによる地球侵略を巡り、そのスパイであるハイブリッドの Voodoo が活躍するという SF 設定となっている。
 
 ライターは最初の#1から#4までを Ron Marz が、残りの2話を現在も DC や Image で活躍しており本連載でも NAILBITER などで取り上げたことのある Josh Williamson が担当している。 Marz といえば Image は Top Cow において WITCHBLADE や ARTIFACTS といった作品での功績が有名だが、こうしてちょいちょい DC で作品を手がけてはいぶし銀な逸品を世に送り出している。彼の物語はこれぞ”アメコミ”と言わんばかりの極めて正統派な作りをしており、文学的な作品やエログロな毒のある作品など、癖のある作品にうんざりした時に読むと特に心地良い。
 
 アーティストの Sami Basri の絵は本作が初めて。 New 52 では確か” EDGE ”ラインと呼ばれるグループに所属していた本作だが、彼のアートはそれほど角が立っておらず非常に見やすい。 Marz のストーリー同様、かなり正統派なスーパーヒーローコミックの絵柄といえるんじゃなかろうか。

 残念ながら New 52 で思うほど読者を獲得できずに次巻で終わりを迎える本シリーズ。果たして話はうまくまとまるのか、そしてそれ以上に気になるのが REBIRTHでの出番はあるのか。案外 Warren Ellis が WILD STORM で彼女を新たなコンセプトで蘇らせるという可能性だって十分ありうる。
 何にせよ続刊を追うと共に彼女の今後の活躍にも期待したい。


原書合本版(Amazon): Voodoo Vol. 1: What Lies Beneath (The New 52)