VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

KID ETERNITY (DC, 1991) 

 元は可愛らしい児童コミックでもMorrisonとFegredoの手にかかればあら不思議、David Cronenbergもびっくりなおどろおどろしいホラーに仕上がりました。


原書合本版(Amazon): Kid Eternity

 深夜の病院に運ばれる昏睡状態の男 — パーティー会場で悪夢のような体験をした後、交通事故に遭った筈の彼は、だが気が付くと自分の部屋にいた。
 そんな彼の前に姿を現したのはKidと名乗る青年。幼い頃に海上事故に遭った彼は、しかし天国で自分の死が予定外だったことが判明すると死んだままこの世を旅することを許されると共に、”Eternity”のかけ声で死んだ者達を呼び出せる不思議な力を与えられる。
 旅の途中でShichirironなる存在の手中に陥り地獄に幽閉されていたと言うKidは、仲間のMr.Keeperを救出するため再び地獄へ戻る手助けをするよう男に求める……。

 WATCHMENはじめ、他社の版権キャラを買収するなり譲り受けるなりして自社でリブートするのはアメコミではそう珍しくないが、本作もそういう元は別の出版社で生まれたものをDCが引き継いだものの1つ。元はTHE SPIRITやPLASTIC MANなどと同じQUALITY COMICSという出版社のキャラクターだったが、50年代半ばに経営者がコミック出版業を離れたのを機にDCが版権を買収。90年代になりVertigoレーベルで過去のキャラをアップデートするのが流行っていた際に当時DOOM PATROLで脚光を浴びていたライターGrant Morrisonと、まだ新人だったDuncan Fegredoの手に渡ったのが本作となる。

 Morrisonと言えばわかり易いストーリーとわかり難いストーリーとの差がかなり極端なライター。本作は独特の世界観や同時に起こっている話同士の繋がりが見え難いという点で必ずしも一気読みにはオススメできないものの、一度そのへんが飲み込めればMorrison得意のメタ要素もなければ話も比較的ストレートなので読みやすいかもしれない。

 Fegredoのアートは以前ENIGMAでも紹介したことがあるも、米国デビュー作となる本作においてその絵柄はかなり異なっており、Bill SienkiewiczやDave McKeanといった粗いペンシルにぼかしたようなカラーを重ねるアーティストからの影響を見て取れる。尤も、だからと言って真似っ子状態になっているかと言われればそういうわけでもなく、彼独特のポーズやホラーの描写はこの時点で既にある程度出来上がっている。目まぐるしくシーンが移り変わるのでストーリーを追うのには若干苦労するものの、1つ1つのコマはじっくり眺めたいほどの出来に仕上がっている。
 また、個人的には本作に登場するクリーチャーや地獄の描写はかなり好み。ENIGMAに登場したヴィラン達もそうだったが、Fegredoのどこからモチーフを引っ張ってきたのかわからない造型は大変魅力的だ。画集なんかを目にすることがあれば絶対手に入れたい。

 初期のVertigoは本作のようなキャラクター性のあるホラーがウリだった。現在のVertigoは少し傾向が変わってしまったものの、その遺伝子はYoung Animalという新たなレーベルが今もしかと受け継いでいる。
 そのうちYAでKid Eternityが登場することを期待したい。