VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

WOLVERINE: OLD MAN LOGAN (Marvel, 2010)

 かつて牙を抜かれた獣も、やがて再び爪を伸ばす。


分冊キンドル版(Amazon): Wolverine (2003-2009) #66

 50年前のヴィラン一斉蜂起によりスーパーヒーロー達が掃討された未来。
 ヒーロー達の中で生き残った数少ない者の1人であるLoganは今や”Wolverine”の名を捨て、Hulkの一族に支配された荒野で家族とひっそりと暮らしていた — そのアダマンチウムの爪にも一度として拳を突き破らせることなく。
 そんな彼のもとをある日訪ねてきたのは同じくヴィランの襲撃を生き残った元スーパーヒーローClint Barton a.k.a Hawkeye — ”ある品”を東部へ移送する仕事を請け負った彼はその道案内役をLoganに依頼するが……。

 映画『LOGAN』の原案とも言われる作品(多分老けてしおれたLoganという部分だけしか共通してないのだろうけれど)。何故か以前から最終号だけ所有していたものの、ちゃんと全体通して読んだことがなかったのでこれを良い機会に通読。
 Mark Millarの作品が苦手な私だけれど、これは率直に良い作品でした。

 メインのクリエイター陣はMillarとアーティストSteve McNivenというCIVIL WARのタッグが再結集した形。 McNivenのアートはアクションもダイナミックだし、情緒っぽいシーンもかなり描けている。彼の描く構図はかなり映像的なので、同じく映像を意識したライティングをするMillarとはかなり相性が良い。勢い重視のシーンと見せ場のシーンとがわかりやすく、メリハリの利いているところなんかも好印象。CIVIL WARの時よりかなり実力が上がっていることを窺わせる。
 
 話の中身についてはMillarの十八番とも言うべき「悪人の一斉蜂起による世界征服」や「ぐれたヒーロー」なんかの要素を盛り込みつつ、しかし過度に読者の神経に障るような描写もなく。良くも悪くもハリウッドのブロックバスター的な作りになっているため読んでいて癪に障るようなところもない一方、読後に少々物足りなさを感じないでもないが「MarvelユニバースでMadMaxやろうぜ」という1つのifとしては十分面白い。彼の作品に通じている”毒”は現代を舞台にした作品なんかだとあまりに倫理的に逸脱し過ぎていて受け付けないことも往々にしてあるが、総じて人々の倫理レベル数段界引き下げられている本作のようなディストピアではそれがむしろ物語にプラスとなる。
 もっとも、これが可能だったのはWolverineというキャラクターを主役に据えたからで、以前別の記事で彼の汎用性の高さについて言及したが、他の例えばSpider-manやCaptain Americaといったヒーローで同じことをやっても通じなかったであろうことは言うまでもない。

 50年前、自らの物語に幕を下ろしたLogan。そんな彼の旅路を描いた本作には終始長いエピローグを見ているような感覚を覚える。しかしそのエピローグさえも幕を下ろす時、終わったと思われた物語が再び紡がれる。
 うん、これは読んどいて損はない。


原書合本版(Amazon): Wolverine: Old Man Logan