VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

SECRET SIX VOL.4: CAUTION TO THE WIND (DC, 2010-11)

 バックカバーのキャッチコピーが
”WITH FRIEND LIKE THESE, WHO NEEDS ENEMIES?”
 となっているが実に的を射ているかと。
 殺し合ったり裏切り合ったり — チームとしてまとまっている事自体が不思議で仕様がないラグタグチーム。


原書合本版(Amazon): Secret Six Vol. 4: Caution to the Wind

  Scandal Savage らオリジナルメンバーが中心のチームと、 Bane が率いる新チームとに分かれた Secret Six 。 Amanda Waller を巡る陰謀に巻き込まれた両チームは獰猛な生き物達が蠢く異世界の奥深くにて対峙するが……。(『 THE REPTILE BRAIN 』編)
 死亡したかつての恋人 Knockout が地獄で苦しんでいる悪夢を見た Scandal は彼女を救うべく隠し持っていた”免罪符”を使おうとするが、金庫の中は既に空っぽ。 ScandalRagdoll の仕業と見て彼を追求する。(『 THE DARKEST HOUSE 』編)
  Scandal という”娘”、それに恋人 Spencer を思いやるうち、自らに弱さが生じていると気付いた Bane はチームを率いて今一度 Batman を襲撃しようと計画を練るが……。(『 CAUTION TO THE WIND 』編)

 メインの物語はあらすじの3本。途中 ACTION COMICS や DOOM PATROL とのクロス・オーバーなどがポツポツ入る。

 『 THE REPTILE BRAIN 』では一度分裂するもののその後のメンバー構成は前巻の面々から Black Alice が後半で脱退する代わりに King Shark が加わる。この King Shark が非常に良いキャラ。勇ましくもどこか抜けており、アクションでも Bane とはまた異なる巨躯の使い方をする。一気にファンになってしまいそう。

 他方、前巻で大きくスポットライトの当たった Catman と Deadshot は今回かなり脇役に徹した感じ。本巻の主役は何と言っても Bane だろう。
 南米のルチャ・リブレを思わせるマスクとスーツや(悪名高き方の)実写映画のおかげで単なる脳筋と思われがちの彼だが、 DARK KNIGHT RISES の敵役にもなり最近 Tom King の BATMAN で取り上げられた時なども見ればわかるように実はかなりの知能派。
 本作でもチーム参加当初から Venom を使用することを頑なに拒否し、禅僧のような求道者として描かれてきたが、最終的に悟りを開いた先に待ち受けていたのはやっぱりかの蝙蝠男だったというわけで。冷静に計画を練りチームを率いる彼の姿はカリスマの域に達している。最後には仮想の”娘”だった Scandal Savage との関係にもピリオドが打たれ、後腐れのない終わり方になっている。

 また本作で注目したのはヴィランから見た”スーパーヒーロー”の描かれ方だ。シリーズ全体通してこれまで何度か言及されてきたが、彼らにしてみればヒーローとは『警察でもないのに勝手にルールを決めて自分達を取り締まる無頼漢』といったところ。確かに、国からお墨付きを貰ったわけでもないのに無闇に犯罪者だからと殴り掛かる存在というのはあらためて考えてみるとかなり物騒な気がしなくもない。
 案外、ヴィラン達の眼に映るヒーローの姿というのこそ嘘偽りのないものなのかもしれないと思ったり。

 自分の信じる道へ進もうとすれば、たちまち社会が立ち塞がる。
 社会に屈服して自らを捻じ曲げるか。
 社会に抗い理想を貫くか。
 ”悪”とは結局のところ、はぐれ者のことを意味するのかもしれない。