VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

MARVEL KNIGHTS SPIDER-MAN: VENOMOUS (Marvel, 2004-05, #5-8)

 うん、納得の面白さ。 Spider-man というヒーローの魅力を確認し直すのには最適な作品。


キンドル分冊版(Amazon): Marvel Knights Spider-Man (2004-2006) #8

  Black Cat の助力もあり、どうにか Electro と Vulture に勝利した Peter Parker a.k.a Spider-man 。だが肝心の Aunt May の行方はわからないまま。その上、病院で撮られた彼の写真を掲載した Daily Bugle がその正体に500万ドルの懸賞金をかけたことから事態は刻一刻と悪化していく。
 焦りを募らせる Peter をよそに、とあるオークション・ハウスではヴィラン達による武器や戦利品のオークションが行われていた。その日最大の出品とは……?

  Mark Millar による Spider-man 第2弾。相変わらず面白い。これまでの否定的な Millar 観を覆すほどです。
 まず、お金や人間関係などの日常的な課題とスーパーヒーローとしての活動との間で板挟みになる Spider-man というキャラクターの根本的な魅力をしっかり描いているため、彼が共感可能なヒーローとなっている。これは大きい。特に現行の AMS からはこの”親愛なる隣人”要素がごっそりと抜け落ちてしまっている節があるので痒いところにちょうど手が届いた感じ。
 加えて Millar の描くキャラの特徴として1つ、もっぱら饒舌であるという点が挙げられるが、そのスタイルは元来おしゃべりな Spidey とよくマッチしている。 CIVIL WAR での Spidey はストーリーの都合上かなり抑えた感じがあったが(それでも良いタイミングで良い台詞を口にしていた)、本作ではそういった制限もなくお喋りな彼を存分に見ることができる。終始切羽詰まった雰囲気の漂う話の中で清涼剤としての役割を果たしてくれるのでありがたい。
 
 アートは前アークに引き続き#6と#7を Dodson 夫妻が、#5と#8を Frank Cho (アート)が主に担当している。 Frank Cho と言えば最近はもっぱら女性スーパーヒーローをバインボインにしたヴァリアント・カバーの数々が物議を醸して有名になっているが、インテリア・アートを改めて読んでみるとわかる通りそれ以外の描写も普通に上手い。このどこかすっきりとしたアクションとかは個人的に結構好み。日常シーンでよく見るとモブに X-Men や FF 、あるいは Cho のオリジナル作 LIBERTY MEADOWS からと思われるキャラがいるようなのも遊びが利いていて好印象。賛否両論なアートを連発しているものの、普通にコミックでももっと活躍が見たいな、と個人的には思っていたりする方です、はい。

  Aunt May を巡る誘拐事件の真相究明というスーパーヒーローな物語と、資金繰りの悩みや罪悪感との葛藤というパーソナルな物語は互いに少しずつ影響し合いながら並行して進んでいく。このギリギリ手が届きそうな距離感 — そう、これこそが私達の愛して已まない” Your Friendly Neighborhood ”の物語だ。


キンドル分冊版(Amazon): Marvel Knights Spider-Man (2004-2006) #5


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本記事で紹介した内容含む原書合本版(Amazon): Spider-Man by Mark Millar Ultimate Collection