VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

B.P.R.D. VOL.1: HOLLOW EARTH AND OTHER STORIES (Dark Horse, 2003)

 謂わば大黒柱がいなくなった家。でも、家族はまだいる。


原書合本版(Amazon)(在庫切れみたいなので今から買うなら以下に掲載するものの方がいいかも): Mike Mignola's B.P.R.D.: Hollow Earth and Other Stories

 自らの出自に関する謎を解明すべく1人旅立った Hellboy 。残された B.P.R.D. では上層部に対する不信感から半魚人 Abe Sapien らまで去ろうとする動きが見られ、チームは瓦解しかけていた。民俗学のエキスパートで組織のコンサルタントを務める Kate Corrigan 博士は何とか彼らを繋ぎ止めようと尽力するが……。
 そんな中、 Abe の部屋に突如として出現し、助けを求める幻影 — それはパイロキネシスとして自らの力を制御すべじゅ現場を離れていた隊員 Liz Sherman のものだった。彼女に一体何が起こったというのか?真相を探るべく、 Abe はホムンクルスの Roger 、そしてエクトプラズム体の霊媒師 Johann Kraus ら新たな隊員達を率いて北極圏へ赴く。

 HELLBOY IN HELL を読んで以来、すっかり Mignolaverse に対するお熱が再燃しましてん。今度はスピンオフよ、とばかりに沼へ飛び込んだ次第(うう、財布の紐が……)。
  Guillermo Del Toro による映画版(そういや今度リブートするとか)だと Hellboy はずっと B.P.R.D. に所属しているものの、コミックではかなり早々にチームを去っており、本作は残された者達の活躍を描く。ダーク・ファンタジー路線に進んだ本家と異なり、こっちはホラー・アクションといおうか若干 SF 気味といおうか。むしろ HELLBOY 誌よりこちらの方が映画版に近い雰囲気かも。

 ライティングについては Mike Mignola が Christopher Golden 、 Tom Sniegoski といった他のクリエイターと共著する形になっており、この後に諸々展開される Hellboy のスピンオフも大半はこのスタイル。確か Mignola が大筋を決め、細かいところを他のライター達が詰めていくというスタイルで制作されていると昔どこかで読んだ気がする(本作で既にその方法が確立されていたかは定かでないけど)。映画やアニメで言えば製作総指揮と監督みたいな感じかと。
  Mignola が直接手がけているわけではないものの、彼の作品に見られるスピード感はしっかり引き継がれており、さっと読めながら満足度はかなり高い出来に仕上がっている。

 今でこそオリジナル色がだいぶ濃くなった本シリーズだが、この時点ではまだ HELLBOY のスピンオフという面も強く見られ、とりわけ Hellboy がいなくなった直後ということもあって彼が随所に登場する。本家だとリーダーと隊員という程度にしか示されていなかった Hellboy と Abe や Liz らとの過去のエピソードなんかも盛り込まれており、普段の活躍とは少々異なる彼の表情を見ることができるのも大きな魅力の1つ。

  Hellboy という要を失った B.P.R.D. 。だが、それが全ての終わりを意味するわけではない。本作は他のメンバー達がその空いた穴を埋めようとする以上に、新たな支柱として己を確立していく様を描いている。
 スピンオフとして始まりながらオリジナリティを確立していく — 逆説的かもしれないがこれこそ正しいスピンオフの作り方といえるだろう。


本記事で紹介した表題作の分冊キンドル版(Amazon): B.P.R.D.: Hollow Earth #1


本記事で紹介した表題作の分冊キンドル版(Amazon): B.P.R.D.: Hollow Earth #2


本記事で紹介した表題作の分冊キンドル版(Amazon): B.P.R.D.: Hollow Earth #3


本記事で紹介した内容を含む原書合本(Amazon): B.P.R.D.: Plague of Frogs Volume 1