VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

CRIMINAL: LAWLESS (Image, 2007, #6-10)

 強くなるほど、身動きが取れなくなる。


原書合本版(Amazon): Criminal Vol. 2: Lawless

 とある理由から軍の独房に収監されていた Tracy Lawless はある日、弟の訃報を受け取る。道端で何者かに殺害された弟の死の真相を探るべく、 Tracy は基地を脱走し、15年以上帰っていなかった故郷の街へ舞い戻る。素性を偽り、弟が行動を共にしていたならず者達と接触を図ろうとする彼だが、連中はちょうど刑務所にいる仲間の脱獄を企てていた……。

  Brian K. Vaughan 、 Joe Hill 、 Warren Ellis をはじめとした数々のクリエイターから絶賛を浴びている名コンビ Ed Brubaker と Sean Phillips による犯罪者の金字塔シリーズ。本作は現在でこそImageから合本が刊行されているものの、元々 Marvel から出ていた作品。リーフとしては以前紹介した COWARD に続けて発表された。合本ごとにその都度話が完結するアンソロジー的スタイルであるものの、舞台が地続きとなっており COWARD の登場人物もポツポツ出てくるためこれから読む方は順番に読むのが良いかと。 Gnarly の経営するバー UNDERTOW は今後も登場人物たちの溜まり場として各物語の交点となっていくのかしらん。

 本作のようなノワール系の作品は話題に上りにくいという話は以前 HIT か何かの記事で述べたと思うが、その大きな要因の1つとして、こういった作品には”驚き”がほぼ見られないということが考えられると思う。つまり、コミックのみならず大きな話題を呼ぶ作品というのは大概物語のどこかに沸点というか、それまで散りばめられていた謎に対する答えや物語の印象をガラリと変えさせる事実が明かされるシーンというのがある。とりわけ最近だとドラマやアニメで”驚愕の事実”が明かされたりするとあっという間に SNS で拡散されて話題を呼ぶ。
 ”驚愕の事実”、”隠された真実”、”明かされる秘密” — 浅ましい。
 正直、私はこれらをあまり評価しない。何故ならこういったものは一種の劇薬のようなもので、明かされた瞬間におけるアドレナリンの噴出が錯覚をもたらしているに過ぎないからだ。実は時間をやり直していたとか、本当は全て夢だったとかという事実を差し引いてもなお高く評価するに値する作品というのはごくわずかだ。

 本作はそういった”驚き”で状況を打破するのではなく、逆に登場人物の一挙一投足によってその後の展開を徐々に狭めている手法を取っている。主人公の Tracy がどういう行動に出て、どういう結末を迎えるかはある程度読んだ時点でざっくり予想できるようになる。だがそれは逆に言うと、そこまでの時点で読者はしっかり Tracy という人物のキャラクターを承知し、物語に呑み込まれていることを意味しているのに他ならない。
 そこに至るまでの過程がごく自然に描かれているからこそ、驚きのない納得の結末に辿り着くことができるのだ。

 クリエイターなら是非読んでおきたい1冊かと。