VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

SEX CRIMINALS VO.2: TWO WORLDS, ONE COP (Image, 2014-15, #6-10)

 これで中学の保健体育はバッチリだ! 


分冊キンドル版(Amazon): Sex Criminals #6

 オーガズムを迎えることで周囲の時間を止めることができるという特殊な能力を有する Suzie とJon 。瞬く間に恋に落ちた2人はその力を使って銀行強盗を企てるものの、謎の3人組に妨害され失敗してしまう。捕まりそうになったところを辛くも逃げ出すことに成功した2人だったが、自分達のような能力者を見張る”セックス警察”がいることを知り計画を断念する。恋の熱も徐々に冷め、日常を立て直そうとする Suzie と Jon 。だがやがて自分達が見張られていることに気付いた Jon が我慢の限界を迎える。

 遂に実写ドラマ化の話まで浮上し出した Matt Fraction と Chip Zdarsky によるセックス・コメディ第2巻。本巻の最初で Suzie が述べている通り、当初は合本1冊で終わるはずだったものの、思わぬ反響からシリーズ続行が決まったこの作品。日本の少年漫画だと途端にダレ始めるのが関の山だが、 Fraction と Zdarsky のエロネタはまだまだ底をついていなかった。飛び交うディルドー、散りばめられるセックス・ジョーク、モザイク一切なしでデカデカと描かれるペニスにヴァギナ。終いには同じ Image から刊行されている人気作 THE WICKED+THE DIVINE のポルノ・パロディ(Kieron Gillen と Jamie McKelvie らしき人物もAVスタッフとしてゲスト出演)なんかも出てきたりと盛りだくさんの内容。なのに全然エロくない。

 前章はどちらかというと Suzie をスポットライトの中心に寄せ、彼女の性的探求を丁寧に描いていたが、今回は Jon をメインに据えている。
  Jon は ADHD の診断を受けており、少年時代から精神科に通い続けている。オーガズムを迎えて能力を発揮している時は生き生きとしているが、普段の生活では気分の上下が激しい。薬を飲むことである程度症状を抑えることができるものの、その副作用で無感動状態に陥ってしまう。
 そんな彼が自らの性ひいては人生全体に折り合いを付けながら Suzie との関係を強めていく様子は現実的な葛藤に満ちている。
 
 上の見出しで冗談めいた書き方をしたが、割とマジで私はこれ保健体育の授業に教材として使えると思う。中学や高校の保健授業で性的なことを教える際にやれ性器やホルモンの働きだの避妊の方法だの客観的事実を教えるのは勿論大切だけど、それを前提とした上で脳と性器が直通している思春期にはこういう主観的なことについても言及すべきだと。
 自分の性や性欲は異常なんじゃないか。
 誰もが一度は思ったことがあるだろう。
 そして、それに対してきちんとした答えを提示してくれるものはあまりに少ない。
 本作は感情面において示唆をくれるそんな例の1つといえる。
 
  避妊の方法なんかもそんじょそこらの教科書よりよほど詳しく書いてるしね。


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