VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

THE PUNISHER: UP IS DOWN AND BLACK IS WHITE (Marvel, 2005, #19-24)

 怒りが募るほど、心は冷めていく。


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 かつて Punisher と対峙しながらも生き残った Cesare ファミリーの問題児 Nicky Cavella — 1年ぶりに組織の会合へ姿を現した彼はすっかり弱体化した同胞達に対し、今度こそ Punisher を始末することと引き換えに自らをトップに就かせるよう要求する。当初は半信半疑の幹部連中だったが、 Cavella はそんな彼らにテレビを見ろと促す。ニュース番組が放送した映像に映っていたものとは……。
 一方その頃、ロシア潜入作戦において Punisher に煮え湯を呑まされた米軍の高官達は、その仕返しのため彼を抹殺すべく1人の工作員を呼び戻す。

 Garth Ennis による Punisher の金字塔である MAX シリーズ。4つ目のアークはこれまでのストーリーに登場したキャラやプロットラインが交差する1つの節目。ただ”集大成”的な内容かというとそういうわけでもなく、むしろあちこちから使えそうな要素をかき集めて1つのストーリーに仕立て上げた”まかない”といった感じの印象。

 今回のストーリーで Frank Castle は最早キャラクターではなく1つのアイテムの域に達している。少年漫画の主人公みたいに成長するわけでもなければいわゆるヒューマンドラマの登場人物みたいに心情面で何か変化があるわけでもない。あくまで本話で踊っているのは彼を虎視眈々と狙うギャングなり工作員なりといった連中だ。 Frank は降り掛かってくる火の粉を肩から払い落としながら、いつにも増して黙々と犯罪者達を血祭りにあげていく。そこに家族を蹂躙されたことへの彼の怒りは感じられない。文字通りの殺人マシンだ。
 
 日本の漫画読者ならこの Frank に対してゴルゴ13なんかとかなり近い印象を抱くかもしれない。私はゴルゴ13については何冊かつまみ食いしたことがあるだけでそれほど詳しくはないので深く語ることはできないものの、 Punisher とゴルゴ13との大きな違いとして1つ、前者が後者と比べてパーソナルな情報量が多いことが挙げられると思う。
 ゴルゴはひたすらミステリアスな存在だ。本名こそ知られているものの、彼の生い立ちや暗殺稼業に手を染めるきっかけなどについてはかなり曖昧模糊となっているのに対して Frank Castle はと言えば、先日記事にした BORN もあれば、彼のオリジンもかなりはっきりしている。
 同じ殺人マシンでも全てが謎に包まれている分だけフラットなゴルゴと、「家族を惨殺された」という悲劇から出発した Punisher。喩え同じ温度域にいる殺人マシン同士であっても、この2人の周囲を取り巻く人間ドラマはかなり違った様相を見せる。
 だが、だからと言って2つのどちらが優れているかという議論は不毛であり無意味だ。どちらも人殺しであるということに変わりはない。


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