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HELLBOY: WAKE THE DEVIL (Dark Horse, 1996, #1-5)

 世界観が本格始動する第2巻。


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Wake the Devil #1

 19世紀から生存が確認され、不死の“吸血鬼”と恐れられた Vladimir Giurescu 。ヒトラーの裏切りに遭い、遂に死亡したと思われていた彼だが、その遺灰は戦後米国に持ち込まれていた。
 時は移り、現代。 NY で殺害されているのを見つかった元ナチスの高官の所有物から Giurescu の遺灰を保存していたと思しき箱が失われていると知った B.P.R.D. は、調査のため隊員を彼の故郷へ派遣する。だが Giurescu と共に彼らを待ち受けていたのは、かつて Hellboy をこの世界に召喚した者達であった……。

 レッドでホットなモンスターハンター Hellboy の活躍を描くシリーズ第2弾。前回は John Byrne が一部スクリプトを担当していたが、今回からはそれも含め Mike Mignola がストーリーを全て担当。ペンシルも無論彼が手がけている。
 そんな混じりっけなしの Mignola 節を初めて見ることができる本巻は、 B.P.R.D. のメンバーや復活したナチスの皆々様など敵味方共に大幅増員。物語全体に漂う空気も若干ゴシックからパルプ寄りとなり、現在の Hellboy シリーズに通じる作風となっている。

  Hellboy シリーズをホラーとして見た際に大きな特徴として挙げられるものの1つとして、様々なホラーを整合性の取れた形で融合しているという点がある。本巻を見ても分かる通り、このシリーズの世界観ではナチス的オカルティズムに始まり、ゴシック・ホラー(吸血鬼)あり、民間伝承 (Baba Yaga) あり、ユニバーサル・モンスター (Abe Sapien) ありときて、終いにはクトゥルフ的コズミック・ホラーまで、古今東西のホラー・ジャンルがまるで違和感なく同居している。改めて考えてみると、これだけベクトルの違うホラーがこんなにもシームレスに共存しているというのはちょっとすごい。

 こうして見た時に浮き彫りとなるのはパロディとしての本シリーズだ。
 そして一般的に“パロディ”と呼ばれる作品群の多くがこの色んなものを一緒くたに集めた際のチグハグ感を、オーディエンスの視点から俯瞰した高慢な嘲りで誤魔化すようなところを、 Hellboy シリーズ始め Mignolaverse では主人公らをそれらと同じ目線に配置し、ひたすら正面から受け止めているところに Mignola の才覚が現れている。

 オリジナリティとは無数の模倣の集合であるなどと頻繁に言われるようになって既に久しいが、それを体現する作品というのはあまりに少ない。そんな中、本シリーズは紛れも無くその数少ない例の1つとして挙げることが可能だろう。

 この Mignolaverse のオリジナリティが今後どのような飛躍を見せていくのか、再読作品ながら非常に楽しみなところだ。


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Wake the Devil #2


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Wake the Devil #3


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Wake the Devil #4


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Wake the Devil #5


原書合本版(在庫切れみたい……)(Amazon): Hellboy Volume 2: Wake the Devil (2nd edition)