VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

KILL YOUR BOYFRIEND (DC/Vertigo, 1995, one-shot)

  Grant Morrison 版 BADLANDS (『地獄の逃避行』とかいう邦題は知らん)


原書旧版版(今買うなら下に掲載の新装版をどうぞ)(Amazon): Kill Your Boyfriend

 何ら不自由のない生活を送る1人の少女。普通の女子学生として漫然と日々を過ごすのに鬱憤を募らせていた彼女は、今日も両親と些細な口論をして家を飛び出す。だが、この日はいつもと違った。近所でも有名な不良の青年と遭遇した彼女は、退屈な日常とそれに甘んじている自分に対する不満を彼に吐露する。すると少女に共感を覚えた青年がこれから彼女のボーイフレンドを殺しにいくことを提案する。

 今や英国爵位まで授かる我らのカリスマ・リーダー Grant Morrison による、若い2人の男女の過激な青春を描いた作品。上記の Terrence Malick 監督作品に触発されて一気に書き上げたという本作は派手ながらどこか清々しい作風。
 今回組んでいるアーティストは後に INVISIBLES 第3シリーズのメイン・アーティストとして再びタッグを組むことになる Philip Bond 。私自身は INVISIBLES の方を先に読んでいたので新鮮さというのはさほど感じなかったものの、 Bond のポップなアートは見る度に味が出てくる類なのでむしろ良かったかと( Morrison と組むアートは Yanick Paquette といい Frazer Irving といいこの手のタイプが多いような気がする)。何気に INVISIBLES のキャラを意識したデザインの登場人物が随所に登場するのでそれらを探すのも楽しい。
 
 話の内容に関して述べると、端的に言えばわかりやすい方の Morrison 。以前本連載で紹介したことのある NAMELESS などとは異なり、スピリチュアルな要素がだいぶナリを潜めている。地に足の着いた INVISIBLES という印象。90年代の英国を舞台に若い男女が Bonnie & Clyde をやったと考えて頂ければ大体そのイメージで間違ってない。
 
 これまで Morrison の作品は面白いファクターやギミックが数多く盛り込まれている一方、登場人物の情動面にやや難アリと感じることが少なくなかったものの、こと本作に関して言えばそこはかなり改善されている。何の変哲もない少女が偶然出逢った男に唆されて、日常と退屈な自分から脱却していく様子が丁寧に描かれている。凶行に走る少女の爽やかな表情がちょっと羨ましいくらい。
 ラストについても類似作品にありがちな残尿感のあるもやもやしたフィニッシュではなく、やりたいことを(全てではないにせよ)やり切った感がある。ブリティッシュ・ウェーブのライターらしい物語のヒネリもしっかり利いており、私には非常に満足のいくエンディングだった。

  Grant Morrison の非スーパーヒーロー系作品に挑戦してみたいと思っている方はまず本作を入門編として読んでみるといいかもしれない。個人的には短いこともあって何度も読み返したくなる作品でした。
 

本記事で紹介した内容含む原書合本版(Amazon): Kill Your Boyfriend/Vimanarama Deluxe