VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y THE LAST MAN VOL.1: UNMANNED (DC/Vertigo, 2002-03, #1-5)

 地球最後の男だからって、あんたのこと好きになったりなんてしないんだから!


キンドル合本版(Amazon): Y: The Last Man, Vol. 1: Unmanned

 
 ある日、世界中でY染色体を持つ全ての動物が同時に死亡するという事件が発生する。突然の異常事態に社会が音を立てて崩れていく中、何故か唯一生き残った米国人の青年 Yorick Brown と、ペットの猿 Ampersand 。オーストラリアで音信不通となった恋人を目指すと同時にこの性虐殺『ジェンダーサイド』の謎に迫るべく、彼は秘密諜報員であるエージェント355と共に首都を発つ……。

  RUNAWAYS に区切りが付いた後、しばらく間を置いてから取り掛かるつもりだった、ライター Brian K. Vaughan による名作中の名作。けれど個人的な事情で一気読みする機会があったので鉄釘は熱い内にということでさっさと記事にしてしまうことにした次第。
 基本的にクリエイター陣は固定してるし、現時点で全て一度読み切っているので新装版の合本ペースで記事を書けないこともないのだけれど、本作についてはちょっと丁寧に分析したいので敢えて旧版ベースでやってみようかと。
 というか、新装版は合本1冊にリーフ10冊分含まれているので何気に展開早いこの物語をそのペースでやると、多分あらすじだけ紹介しても何がなんだかわからないと思うんで(興味が湧いてくれれば邦訳版も2巻だかまでは出てるんで読んでくれるにこしたことはないんだけど)。

 ペンシルは Pia Guerra 、カバーは J. G. Jones 。 Jones のカバーはいつどの絵を見ても大変美しい。ヒーローも非ヒーローも迫力たっぷり、かつアーティスティックな絵に仕上げてくれる。
  Guerra のインテリアに関してもシンプルながら要所要所のツボをしっかり抑えており、読み進めるのに過不足ない情報量の絵をストレートに伝えてくる。非常に Vertigo らしい絵柄と言おうか。ポップ過ぎずリアル過ぎもしない絵柄が、世界中の雄がいっぺんに死滅することで父権社会をベースにした既存の政治経済が崩壊するディストピア的世界観と、ユーモアを多用する会話を両立させる Vaughan のストーリーテリングと程よくマッチしている。

 世界で男は俺1人なんてストーリー、日本の漫画やラノベならあっという間にハーレム物に落ちぶれてしまいかねない舞台設定なものの、そこはそこ Brian K. Vaughan 。そうは問屋が卸しません。
 先に結論から言ってしまうと地球最後の男はプリンスではなく天然記念物として扱われるわけです。 Yorick に近寄ってくる女性にしても研究対象として保存するとか、外交の切り札とするべくかっさらうとか、はたまたかつての圧制者だったこの最後の害虫を殺しちまおうとか、まあロクなことにはならない。

 そんな天然記念物というよりかは天然危険物と呼んだ方が正しそうな1人の男を辿る数奇な運命。今後週1か週2のペースで進めていくつもりなんでどうぞよろしく。


原書合本版(Amazon): Y: The Last Man Book One (Y the Last Man)