VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

VIMANARAMA (DC/Vertigo, 2005, #1-3)

 一見異色。でも実は正統派のスーパーヒーロー物語。


本記事で紹介する内容含めた原初合本版(楽天): Kill Your Boyfriend/Vimanarama Deluxe KILL YOUR BOYFRIEND/VIMANARAMA [ Grant Morrison ]

 アーティストを志す冴えない青年 Ali は、見合い相手である Sofia との初対面を目前に控えて悶々としていたところ、家族の経営する店の床に穴が空き身動きが取れなくなったという兄を助け出す。だが兄を病院へ連れていきホッとしたのも束の間、今度は生後間もない甥っ子が穴の中へ消えてしまう。甥を連れ戻すべく自らもまた穴の中へ入っていた Ali はそこで Sofia と初めて相まみえるも、やがて2人は奇妙な様相を呈する地下都市に辿り着く。そこは古の時代に封印された邪悪な存在が眠る場所で……。

  KILL YOUR BOYFRIEND と併録されていた Grant Morrison と Philip Bond によるもう1作のオリジナル作品。 KYB がストレートでわかりやすいストーリーだったのに対し、こちらの Morrison は INVISIBLES とかの若干癖のある方の彼。とは言うものの、一枚皮をひん剥けば ALL-STAR SUPERMAN とかを彷彿とさせるところがないでもなかったり。

  Morrison がインドの神々にご執心なのは比較的知られており、オリジナル系作品ではそれっぽい描写をあちこち見かけられたり、 Graphic India というインド系クリエイターが数多く在籍する新規出版社にもいくつか作品を提供したりしている。
 本作は彼のそんな面が全面に押し出されていると言おうか。
 話の大筋はそれほど複雑じゃない筈なのに、インドの神話をふんだんにモチーフとして取り入れている上、そこへ Morrison 独自の解釈まで加えてしまっているもんだからハードルがぐいぐいっと持ち上げられてしまっている感じ。
 もうこのあたりは水木しげるの作品に妖怪ものが多いのと同じようなものなので慣れるしかない。そういうライターなんだと一度了解すりゃフィルターかけるのも可能なんで。
 私?私はこういうのをきっかけにバガヴァット・ギーターとか読み始める口です。
 
 今回の Phillip Bond のアートは Jack Kirby を意識してデザインしているとかで、 KYB の時よりもラフな線をうまく削ぎ落とした、カートゥーン調な画風へ舵を切っている。どこか愛嬌を感じるキャラクター造形とか、愉快な趣の動作とかが見ていて飽きない。ホント、この人のアートは見る度に引き込まれる。
 決してスーパーヒーロー系作品にフィットするような絵柄ではないものの、むしろ素顔をしっかりと見せる本作のような作品でこそ彼の良さは引き立つ。 Peter Milligan なんかと組んでも良い絵が見られるんじゃないかなと思ったり。

 突き詰めて言えば本作はうだつの上がらない1人の青年が恋に落ちて奮闘する成長譚だ。インド哲学なスーパーヒーローがおまけとまでは言わないが、あれこれ調べたり考えたりするのはひとまず置いておいて、まずは軽い気持ちで目を通してみると本作の面白さがわかるかと思われる。
 意外な面白さに気付くことができるかもしれない。


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