VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y THE LAST MAN VO.2: CYCLES (DC/Vertigo, 2003, #6-10)

 物語とは「好き」と「嫌い」の重なり合い。


原書合本版(旧版)(Amazon): Y: The Last Man, Vol. 2: Cycles

 遺伝学の若き才媛 Allison Mann 博士と合流した Yorick と Agent 355 はボストンで破壊された博士の研究のバックアップがあるというサン・フランシスコを目指して西へ歩を進める。だが乗り込んだ列車の中でまたもトラブルに巻き込まれる彼ら。難を逃れるため飛び降りた拍子に気を失った Yorick は閑静な田舎町 Marrisville で目を覚ます。やがて彼は自らを介抱してくれた Sonia という女性と惹かれ合うが……。
 一方その頃、女性至上主義を掲げる過激な組織 Amazons は地上最後の男を処刑するため Yorick との距離を着実に縮めていた。その中には彼の姉 Hero の姿もあり……?

  Y 染色体を有する動物(植物は健在みたい)が一掃された世界を最後の男が旅するディストピアロードムービーならぬロードコミック。今回は紆余曲折を経てとある田舎町に立ち寄ることとなった一行、そして彼らを追い詰める女傑集団 Amazons との対峙を描く。 Amazons との対決はもっと後の方になるかと当初思っていたのでこの 2nd アークであっさりやってしまったのは少々驚き。 Brian K. Vaughan の作品においてこのスピード感はやっぱり大きな魅力の1つだなと改めて実感致しました。

 はい、そんなわけで今回はこのスピード感って奴に絡めて話をしてみようかと思います。
 リーフで読み進めている SAGA なんかと読み比べてもわかるのだけれど、 Vaughan の手がける作品は月刊誌で少しずつ読み進めても、合本形式でがっとまとめて読んでも、どちらにしろ楽しむことができるという特徴がある。
 で、おそらくそれを可能にしているのがリーフ1冊単位における物語の密度、つまりスピード感。じゃあこのスピード感がどうやってもたらされているのかと考えると、色々要因はあるのだろうけれど、私は人間関係の構築にその1つがあると思う。
 
 例えば今回のエピソードを見てみよう。
 列車から転落した Yorick が目を覚まし、気絶していた自分を介抱してくれた Sonia と出会ってから映画の話が通じて意気投合するまでわずか3ページ。この時点で2人が惹かれ合っているのは既に一目瞭然だ。やがて彼らは予定調和のように口づけを交わす。
 もう1つ例を挙げるなら、そんな2人の様子を陰から見ていた Yorick の姉 Hero は彼の行為を本命である Beth に対する不貞であると見做し( Amazons の洗脳もあり)いよいよ弟への憎悪と嫌悪を募らせていく。
 と、こうして簡単に文章でまとめられてしまうほど登場人物同士の愛憎因果関係が非常にはっきりしているのだ。そして上記に挙げた2つの例のように1つの関係ば別の関係に影響を及ぼすことでドラマが生まれていく。
 なんだそんなことか、と思ってしまう人もいるかもしれないが、意外とこういったクリーンカットな人間関係を構築していない作品というのは数多い。そしてそういった作品は往々にして説得力に欠ける。物語の進行は登場人物同士の関係の変化であると考えた時、このわかりやすさは確実に有効な武器となるだろう。

 今後もこのクリーンカットな人間関係が重なり合った時、どのような化学反応が起こるのか注目していきたい。


本記事で紹介した内容含む原書合本版(新装版)(Amazon): Y: The Last Man Book One (Y the Last Man)