VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

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BATMAN AND ROBIN: BATMAN AND ROBIN MUST DIE & BLACK MASS (DC, 2010-11, #13-16)

 フィナーレ。そして物語は次のステージへ。


本記事で紹介した内容含む原書合本版(Amazon): Batman and Robin, Vol. 3: Batman & Robin Must Die! (Batman by Grant Morrison series)

 遂に Gotham への侵攻を本格化させた Thomas Wayne a.k.a Doctor Hurt 。黒魔術により長寿を得た彼は Bruce Wayne の父を騙り街へ凱旋を果たすと、 99 Fiends ら暗殺者集団を率いて Wayne 家の屋敷に乗り込もうとする。一方その頃、こちらは正体を明かした Oberon Sexton — Joker は勾留されている G.C.P.D. 署内で Robin と対峙していた。
やがて敵の奸計に嵌り Batman & Robin 、ひいては Gotham が絶体絶命のピンチに陥った時、あの男が帰ってくる……!

  Dick Grayson の嗤う Batman 、それに Damina Wayne のしかめっ面 Robin による新生ダイナミック・デュオの活躍を描いたシリーズの終着点。長らくGrant Morrisonのランで Bruce Wayne を苦しめてきた Doctor Hurt との対決にも終止符を打ち、色々な意味で節目となっている。

 #13−15が『 BATMAN AND ROBIN MUST DIE 』編、#16が『 BLACK MASS 』編となっており、アーティストは前者を Frazer Irving が手がけ、後者は彼と共に Cameron Stewart や(今後再び名を目にすることとなる) Chris Burnham などもペンシルに参加している。 #16のStewart による乱闘シーンは一見の価値あり。 Irving の描く Joker の姿も見応えがある。本作で彼のアートが気に入った方は是非ともこれまた彼と Morrison のタッグが手がける ANNIHILATOR なんかを読んでみると良い。度肝を抜かれること間違いなしだ。

 本シリーズ含めて Morrison のランは闇の騎士の冒険に様々な新機軸をもたらしたが、それは Batman らヴィジランテの側のみならずヴィランの側にも言えることだ。
 こと本シリーズに関して言えば Joker を敵ポジションに配置しなかったことはかなり大きい。 Bruce Wayne の Batman において徹頭徹尾”宿敵”として扱われ、何らかの一発ネタを除けばまずぶれることはなかった Joker 。だが今回のシリーズで彼は Oberon Sexton としてダイナミック・デュオにヒントを与えて推理に貢献したり、 Doctor Hurt を陥れることで結果的に Batman を利したりと、中立からやや味方っぽい位置で立ち振る舞う(まあそれ以外のやることもちゃんとやってるけど)。
  Joker という Batman のネメシスを敢えてその固定ポジションから外すことで、この BATMAN AND ROBIN というシリーズでは Professor Pyg や Flamingo など新しいヴィランを数多く加えることに成功している。
 惜しいのはこれらのヴィランがこれ以降中々活躍する場を与えられないことだが、 Pyg なんかはもういっそ Night Wing か Robin の宿敵にしてしまえば色々と面白いことができると思うので今後の登場を期待したい。

 まあ、そんなこんなで Bruce Wayne の帰還と共に新生ダイナミック・デュオの活躍はこれにて一旦幕、 Morrison の長きに渡る Batman のランもいよいよ終わりが見えてきた。
 本連載も最後まで追っていこうと思うのでどうぞよろしく。