VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y: THE LAST MAN VOL. 4: SAFEWORD (VERTIGO, 2002, #18-23)

 ところでドレスっぽい衣装でも”ボンデージ”って呼んでもいいんすかね?
 いや、好きだけど。


原書版合本(Amazon): Y: The Last Man, Vol. 4: Safeword

  Yorick が生存した謎を解明すべく、 Mann 博士の研究のバックアップがあるサン・フランシスコへ向かう一行だったがその途中、道中腕に負った傷がもとで猿の Ampersand が体調を崩してしまう。抗生物質を手に入れるべく病院へ忍び込むことになったエージェント 355 らだが、警備が厳重だというその施設にわざわざ(ただでさえトラブルメーカーな) Yorick まで連れて行くことはないと判断した彼女は近くの小屋に1人住む元同僚のエージェント 711 に彼の身元を預けることを決める。しかしその晩、 711 の小屋で彼女から渡された飲み物を口にした Yorick は、気が付くと半裸の状態で縛られ吊るされていた。やがて目の前にボンデージ衣装に身を包んだ 711 が姿を現し……。

 謎の疫病により世界中から男という男がほぼ一掃された世界を舞台に地上最後(かもしれない)男となった青年の奇妙な旅路を描いた本シリーズも早くも4巻目。本巻に収録されているのはあらすじにある『 SAFEWORD 』編(あらすじを見てキンキーな展開を期待した方はごめんなさい。あんまそういう気配はないっす)と、一行の進む道を封鎖する過激な武装集団との騒動を描く『 WIDOW’S PASS 』編との2つ。どちらも主人公である Yorick にとって精神的なターニング・ポイントとなっているエピソードで、ぱっと見はやや地味ながらシリーズ通してかなり重要な部分となっている。

  Vaughan の手がける作品には『 SAFEWORDS 』編で見られるようなショック療法的な心の成長が描かれるものが多く、現在彼が Fiona Staples と手がけている SAGA でも父親Marko がドラッグによるトリップ体験を通して一皮剥けているのは記憶に新しい。 RUNAWAYS でも Chase なんかは自らの臨死体験を経て Gert に恋心を抱くようになると共に、その後のストーリーでもやや大人びた表情を見せるようになっている。
 こうしたやり口は以前言及した数学公式的な Vaughan のストーリー構成にも関わるのかもしれないと思う一方で、だからといってどのストーリーも似たり寄ったりな感じになっているわけではないのは流石といったところだろう。
 ついでにこの『 SAFEWORDS 』編に関してもう1つ言及とするなら、ほぼ小屋の中を舞台に Yorick と 711 とのやり取りだけで進むこのエピソードでフロッピー3冊分費やしながら、全く飽きを感じさせないことにも驚かされる。
  Yorick の人生にこれまで起こってきたいくつかのエピソードを自然なダイアログでつなぎ合わせながら1つの結論へ辿り着くようまとめ上げる — 単に無意味な台詞でパネルを埋めるような作品とは異なる、これこそ”会話劇”と呼ぶにふさわしいだろう。

 本巻での変化が今後ストーリーにどういった形で絡んでくるかも含めて、続刊も眺めていくことにしたい。