VISUAL BULLETS

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ROBIN (DC, 1991, #1-5)

 可愛い子には旅をさせろ。


原書版合本(Amazon): Robin Vol. 1: Reborn

 遂に新たなRobinとして赤と緑の衣装へ袖を通すことを許された少年Tim Drake。だが未だ闇の騎士の傍で街の犯罪に立ち向かっていけるか自信が持てない彼は、敢えて1度Gothamを離れてパリに在住する古武術家のもとへ武者修行をしに向かう。そんなある日、息抜きに街へ繰り出した先で1人の少女と出会ったTimは彼女が中国系ギャングに絡まれるのを見ると、彼女を救い出すべくRobinとして彼らの後を追い始めるが、そこで単身一味に挑みかかる米国人Clydeと相まみえる。やがて共闘し始めた2人の前に最強の暗殺者Lady Shivaが姿を現すが……。

 DETECTIVE COMICS誌やBATMAN誌での研修期間を終えてようやくRobinの称号と衣装を継いだTim Drake初のミニシリーズは、かつてのBruceを思わせる国外での武者修行と、そこで遭遇した事件における彼の活躍を描いた逸品。
 以前紹介したBATMAN誌のエンディングと地続きになっており、新装版の合本でも一緒に収録されているもののクリエイター陣は一新されており、ライターはAlan GrantからChuck Dixonへ。ペンシルも新たにTom Lyleが手がけている。Dixonは80年代から90年代にかけて数多くのスーパーヒーロー作品を手掛けた名物ライターで現在も活躍しているため名前を知っている方も多いんじゃないかと。

 Dixonの手がけるストーリーはスーパーヒーローとしての側面を前面に打ち出したような現在の派手なストーリーとは異なり、クライム・ノベルのペーパーバックを思わせる地に足の着いた読み応え。ぱっと見の見栄えは必ずしも良くないかもしれないものの、推理シーンなんかは現在よりもよほど丁寧に描かれており、長い目で見ると確実に読む者の心を捉える作りとなっている印象。リアルタイムで読んでいたような人には今でも根強いファンが多いんだろうな。

 ただだからと言ってスーパーヒーロー物としての魅力がイマイチかと言われれば決してそんなこともなく。Timと彼にとってマーシャル・アーツの師であるLady Shivaとの邂逅であるとか、それに絡んで彼が今も使用する得物のスタッフを選んだ経緯なんかも丁寧に描かれていて、現在も活躍する(……ん、今はMr.Ozに囚われてるんだっけか)彼の原点としても非常に秀逸なエピソードとなっている。スタッフの先から音が鳴る仕組みなんかは今も使ってやればいいのになと思わないでもない。

 スーパーヒーロー物としてはいぶし銀、クライム物としても確かな手応えを感じられる。こういう活躍をしてこそ”ストリート”系ヴィジランテと呼ぶにふさわしいんじゃないだろうかと思ったり。

 そのうち90年代の作品をがっつり読み込んでみようか知らん。