VISUAL BULLETS

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B.P.R.D. VOL.2: THE SOUL OF VENICE AND OTHER STORIES (DARK HORSE, 2003-04)

 まだ前哨戦的な。


原書版合本(Amazon): B.P.R.D. 2: The Soul of Venice and Other Stories (B.P.R.D. (Graphic Novels))

 最高のフィールドエージェントでありチームの大黒柱でもあった Hellboy の去った超常現象研究対策機関、通称 B.P.R.D. 。しかし、彼らに休んでいる暇はない。半魚人の Abe Sapien 、パイロキネシスの Liz Sherman 、ホムンクルスの Roger 、それにエクトプラズム体の Johann Kraus らは亡霊の群れから動く人形軍団まで、今日も世界各地で人々を脅かす奇怪な現象の数々に立ち向かう。

 ようやく Hellboy が追いついたのでこちらも続きを読み進められるようになったスピンオフ・シリーズ……とはいったものの、今回の合本は Hellboy がいないということを除けば時系列のことなどほとんど気にする必要のない諸々のミニエピソードを詰め合わせたような合本。

 話もバラバラならクリエイター陣もエピソードごとに異なり、 Mike Mignola が携わっているのも表題作『 THE SOUL OF VENICE 』編と『 ANOTHER DAY AT THE OFFICE 』編のみ。その上前者は共著という形でのライティング参加だし、後者もほんの数ページのみの短編なのでこと本巻に関して言えば Mignola 成分はだいぶ薄まっているか。まあ、その分ゲストクリエイター達はバラエティ豊かで、ライター陣だけ見ても Michael Avon Oeming や Joe Harris 、しまいには Geoff Johns なんてそうそうたる顔ぶれ。

 アートも Scott Kolins (もちろん組んでいるのは FLASH でもお馴染みのタッグである Johns )など様々なクリエイターが手がけているが、やはり今回1人特筆すべき人物を挙げるとすれば『 DARK WATERS 』編のペンシルを担当しており、今後のストーリーでもメインアーティストとしてシリーズに携わっていくこととなる Guy Davis だろう。
 ラフな線画ながら切れのある絵を描く彼の画風は、おどろおどろしいクリーチャーの数々に重火器を中心とした近代兵器で立ち向かう本作の雰囲気にピッタリだ。こと『 DARK WATERS 』編のみに関してのみ言えば、ややアクションが控えめな印象は否めなかったものの、巨大な泥のうねりやそれに応戦するメンバーの姿に期待できるものを感じ取れた。

 スピンオフを作る際の最も難しいところは本家本元が打ち立てた世界観を引き継ぎながら、いかに独自性の強いストーリーを打ち出していくかということだが、どんどん民間伝承的な色合いを強めていく本家 HELLBOY シリーズに比べて、痛快なアクション・ホラーとして展開する本作はストーリーについては言うまでもなく。アートに関しても Mignola を思わせるたどたどしさもありながら、シャープな印象も与える Davis の絵によりそれは達成されそうだ。

 いよいよ次からこの本格始動するシリーズ。期待に胸を膨らませながらページを捲りたい。