VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y: THE LAST MAN VOL.6: GIRL ON GIRL (DC/VERTIGO, #32- 36)

 これが新たな局面の難しさか。


Y: The Last Man, Vol. 6: Girl on Girl

 謎の女忍者により拐かされてしまった Ampersand を追って日本へ赴くこととなった Yorick ら一行。とある輸送船に潜り込むことに成功する彼らは(例のごとく)出港して間もなく見つかってしまうものの、船長である Kilina のもとへ連行された彼は予想に反して歓待を受ける。ほっと一息吐いたのも束の間、どうやら Kilina 率いるこの The Whale 号には裏の顔があるようで……?
 一方その頃、オーストラリアにいる Yorick のガールフレンド Beth はひょんなことからアボリジニの集団に拉致されて奇妙な夢を見ていた。

 地上最後の青年が辿る数奇な旅路を描くロード・コミック。前巻で Yorick が生存した鍵であると判明した直後、何だかサイコな(サイコな奴が次から次へと登場するのもこのシリーズの特徴かも)女忍者に誘拐されてしまった旅のマスコット Ampersand を追って、一行は Mann 博士の実家がある日本へ。これまで大きな謎だったことが判明したことや、旅が新たな目的地を得たことで1つの節目を迎えての本巻と相成ります。
 中身の大部分は Yorick らが乗り込んだ船で巻き起こるトラブルを描いた『 GIRL ON GIRL 』編、ラストの#36のみオーストラリアの Beth を描いた挿話的エピソード『 BOY LOSES GIRL 』編となっている。
 
 うーん、必要なエピソードであったことは間違いないし、全く新要素がないわけでもなかったものの、前回前々回のインパクトに比べると本巻はやや控え目な印象を受けたかなというのが正直な感想。
 船旅とか海賊とか海のロマンにほとんど食指を唆られない私個人の好みもあるのだろうけれど、そうでなくとも長期シリーズでこういう時期があるのはある程度仕方がない。
 とりわけ本作では開始以来積み上げてきたものは前巻までの時点で8割近く放出しきってしまったようだったし、新たな局面を続刊で持ってくるために本巻がやや守りというか準備段階に入ったのも当然っちゃ当然。ドラマとかでも前シーズンからの盛り上がりに反して新シーズンの開幕がやや緩めに感じるというのはよくあること。
 仮に本巻以前を第1シーズンとして本巻からを第2シーズンとしてみれば、今度は世界中の女性がバタバタ死んでいくという展開でもしない限りシリーズ開始時のインパクトには敵わないわけで。
 
 Bethに関するエピソードについても、これまで Yorick の最終目的地点として度々話の中にはでてきた彼女だったものの、キャラクターとしてほとんどスポットライトを浴びることがなかったため、やっていることは以前 Yorick の姉 Hero の姿を描いた『 HERO’S JOURNEY 』編と大差なくともやはり既にある程度キャラクターとしての魅力を確立していたHeroのエピソードと比べてやや薄味かもしれない。

 ……と、まあいかにもイマイチっぽい感想をつらつらと述べたものの、あくまで控えめ薄めなのはこれまでのエピソードに比べてというだけの話なんで。言ってみれば今までずっと100点か99点しか取ってなかったのが初めて98点を取ったとかその程度のお話。そんじょそこらの作品よりははるかに面白いのでどうかご安心を。