VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y: THE LAST MAN VOL.7: PAPER DOLLS (DC/VERTIGO, 2002, #37-42)

 サイド・ストーリーをやる意味とは。


Y: The Last Man, Vol. 7: Paper Dolls

 沈没した The Whale 号からオーストラリア海軍の潜水艦へ移り(うん、まあ色々あったのよ)シドニーの港へやって来た Yorick ら。恋人 Beth の行方を探したいという彼の希望をかなえるためエージェント 355 は彼と共に街へ繰り出すことにするも、彼女が Mann と一夜を共にしたのを Yorick が見て以来、2人の関係はギクシャクしており……。
 一方その頃、男が死滅した筈の世界に唯一生存している青年の噂を聞きつけた1人のゴシップ・ライターが彼らと同じ街にやって来ていた。

 本巻に収録されている内容は上記あらすじにある『 PAPER DOLLS 』編の他、 Yorick が過去に教会で一夜を共にした後妊娠が判明したもう1人(と言っちゃ何だか失礼か)の Beth 、 Agent 355 、それに現在サイコくのいち Toyota に誘拐されている猿の Ampersand という2人と1匹にそれぞれスポットライトを当てた1話完結が3つという構成。

『 PAPER DOLLS 』編に関して言えばややかったるい印象が否めなかった前巻から一転、早くも持ち直してきたなというのがまず読んだ直後の感想。
 ただそれにしてもパパラッチって鬱陶しいです。この類の報道人の登場する作品ってこれまでも色んな形で見てきたものの、憎たらしくない輩は見たことないっす( Spider Jerusalem や Daily Planet の皆様はちゃんとした”ジャーナリスト”なのでここには含まない。真実を追いかけるかセンセーションを追いかけるかでずいぶん差があるわけ)。

 まあ、それはさておき。本巻で特徴的なのはそのパパラッチ絡みの話よりかは3号連続で Yorick からスポットライトを逸らして他の登場人物に関するエピソードをやったことだろう。これまでも2連続でやることはあったものの、3度も続けざまにやってのけたのは今回が初めてじゃなかろか。
 こういうサイドストーリーは一見すると脱線のように見えなくもないけれど、実は予め外堀を埋めておくことで実際その人物が本筋へ絡んできた際には最初から読者との間に一定の親密度が築かれている結果を生むため、長い目で見ると非常に効果的な創作法ではある(もちろん、これらのサイドストーリーやそこに登場するキャラクターが後々本筋へ絡んでくるということが大前提になるのだけれど)。
 そしてこのようなエピソードを3つも立て続けに挟んだということは Vaughan が合本を念頭に置いたペースを配分をしたということもある他方、それ以上にこれらのキャラクターがどんどん活躍していく急展開の予告でもあるのかもしれない。

 何にせよ、今後本作がますます緊迫していくことは間違いあるまい。