VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y: THE LAST MAN VOL. 8: KIMONO DRAGONS (DC/VERTIGO, 2006, #43-48)

 舞台は日本へ。


Y: The Last Man, Vol. 8: Kimono Dragons

 新たに元オーストラリア海軍の Rose を仲間に加え、サイコくのいち Toyota に拐かされた(ものの逃げ出したとはつゆ知らず) Ampersand を追い日本はヨコガタ(横浜か?)へやって来た Yorick ら一行。近くに実家がある Allison が Rose と共に母親のもとを訪ねる間、 Yorick と 355 は東京にいることが判明した Ampersand の追跡に当たるが、辿り着いたのは繁華街にあるどぎつい風俗店で……。

 いよいよ残す巻数も3冊となった本シリーズ。8冊目となる今回の合本ではぱっと見衝撃的なイベントはあまりないものの(いや、それでも結構死人は出てるし案外私が慣れちゃっただけという可能性も……)、一度最後まで読み通した上で改めてページをめくり返してみると Allison と Rose であるとか、 Yorick と 355 とであるとか人間関係的な面で大きな変化がそこここで伺えた。

 そういう意味では後の展開への布石を敷く準備段階として見ることもできるけれど、前々巻のような間延びしたというか弾幕が薄い印象は受けなかったので、うーん……やっぱりあのエピソードをかったるく感じたのは私に海のロマンを感じる心がないためだろうか。

 まあ、それはともかく。例のごとく本筋とは別に差し入れられるエピソードとしては、まず本筋の展開に併せてか日本が地元である Allison の生い立ちを描く『 THE TIN MAN 』編、そしてシリーズ開始当初から執拗に Yorick を追い続けるイスラエル軍部隊の指揮官 Altar の過去を描く『 GEHENNA 』編。
 こうして登場人物各々に過去というかキャラクターを決定づけるイベントが用意されているのを見ると、改めて物語というのは人間関係の化学反応が連鎖することで成立しているのだなと実感させられる。
 とりわけ本作における登場人物の行動原理や愛憎のベクトルというのは以前も言及したように読んでいて非常にわかりやすいものなので、そういったシンプルな人間関係が本筋で1本また1本と絡み合っていくのは見ていて感心させられる。20ページ近くの1話で語り尽くせつてしまうエピソードを備えた登場人物達が本筋で重なり合い、サイド・ストーリーと思われていた過去が現在に巻き込まれて重層的な物語を生み出していく様子は実に見事だ。

 さて、ようやく Ampersand とも再会を果たして各々の距離がぐっと縮まったところで、再び緊張感の漂い始めた本作が次はどこへ向かうのか。引き続き追っていくことにしよう。