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PUNISHER: BARRACUDA (MARVEL, 2006, #31-36)

 最凶なのが逆にいい。


The Punisher (2004-2008) #31 (The Punisher (2004-2009))

 とあるコカインの密売組織を強襲した際、彼らのアジトに監禁されている1人のホワイトカラーを見つけた Frank Castle a.k.a The Punisher 。エネルギー産業のベンチャー企業に勤めているという男は意図的な停電を利用して不正な株の操作を目論む会社の陰謀を Castle に告げると、彼に助けを求める。一方、その企業のトップである Harry Ebbing は、 Punisher が自分達の計画を嗅ぎつけたと知ると、最凶最悪の男 Barracuda にその始末を依頼する……。

 しばらくご無沙汰していたライター Garth Ennis による Punisher の金字塔的シリーズ。
 久々の記事となる本巻で Frank Castle が相手にするのはいつものような裏社会のマフィアやジャンキーではなく、ウォール街に居を構えるホワイトカラーの皆さん。普段なら相手にしないようなぼんぼん連中をどう料理するのかと思いきや、いやいやいや。片目を潰されても指を数本ちょん切られてもまるで動じないとんでも男が出てきましたよっと。金歯になっている前歯が” FUCK YOU ”とかインパクト強すぎだよ、 Barracuda さん。

 面白いのは、こういった残忍な凶行も平気でやってのけるどころかむしろ楽しむフシさえ見られるようなキャラクターはその姿を追っていく内、次第に魅力的に見えてくるというかそれほど悪いやつではないかのような錯覚が生じてくるということ(あくまでフィクションの話な。念のため)。 Joker とか Deadpool とかもこれに含まれる。
  Barracuda にしても最初はとんでも最悪な敵役という印象だったのが、終盤になると何だか生かしといても良いんじゃないかと思えてしまうほどに。
 
 とどのつまりキャラクターとしての魅力という点では別に善悪という区分はあまり関係なく、結局はその言動に1本筋が通っているかどうかということだけが重要になってくるということなのかもしれない。

 そう考えると同じく殺人マシンながらあくまで冷めている我らが Frank Castle a.k.a The Punisher も、実は Barracuda とそう変わらない存在 — 差異よりかはむしろ共通点の方が遥かに多い存在であるという事実が浮き彫りになっていくる。
 だとすれば、 Frank がこの男に向ける並々ならぬ敵意というのは単に一度はしてやられたことによる復讐心からのみくるものではなく。コインの表裏の関係にある相手に向ける同族嫌悪も少なからずあるのではないかという推測が可能となる。

 こういった似て非なるキャラクターというのを通して主人公の新たな一面を探ってみるような読み方もそれなりに面白いかもしれない。
 いつか、色んな作品でこういう関係にあるキャラクターをひたすら探すようなこともやってみたいね。


The Punisher (2004-2008) #32 (The Punisher (2004-2009))


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Punisher Max: The Complete Collection Vol. 3