VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

Y: THE LAST MAN VOL.10: WHYS AND WHEREFORES (DC/VERTIGO, 2007-08, #55-60)

 そして物語は終わる — 。


Y: The Last Man, Vol. 10: Whys and Wherefores

 道中若干のトラブルに見舞われながらも遂に恋人の Beth が待つフランスはパリに辿り着いた Yorick とエージェント 355 。2人が Yorick の想い人を探し歩く花の都には、だが彼を追ってきた姉の Hero や彼の子を産んだもう1人の Beth 、そして今なお彼の身柄を確保しようとイスラエル軍の部隊を率いる Altar らも来ていた。あらゆる男が一掃された世界を旅してきた地上最後の男、 Yorick Brown — 彼の奇妙な旅の終着点、そしてその先にある光景とは……。

 はい、そんな訳でようやく最終巻に辿り着きました、ライター Brian K. Vaughan の最高傑作との呼び声も高い地上最後の男 Y の数奇な旅路を描いた物語。結構サクサクと記事をアップしていたつもりだけれど、それでも2ヶ月弱はかかったか。
 少なくとも21世紀に入ってから刊行されたコミックの中では1,2を争う作品であることは間違いあるまい。最初から最後までとにかく密度が一般的なコミック作品とは桁違いで、とにかくページを捲る手が止まらなかった。ただ読むだけでもトップ・クオリティであることはもちろん、創作に携わる人間にとっては色々と分析してみると得るものが多いだろう。

 内容について今更どこがどう面白いのかといったことについて最早私の文章で説明するのは蛇足でしかない。こればかりはここでだらだら高説を垂れるよりは純粋に「読んでくれ」という一言の方がよほど効果的だ。
 なのでここではこれまで何度か本作に関して言及してきた「人間関係の重なりと連鎖」としての本作、これがどのような終わりを迎えたかという点に関して言及するに留めておきたい。

 結論から言えば、シンプルな人間関係が絡み合い、重なり合うことによって緊張感の絶えないドラマを成立させて本作の終わり方はごく自然に。その連鎖の終焉、つまり人間関係の終焉によってもたらされる。これまでの旅路で数多くの知己友人を得た Yorick が残り僅かとなったページの中で1人また1人とこれまで出会ってきた者達へ別れを告げていく形で物語は終わるのだ。

 その姿はあまりに切なく、寂しく、だがとても正しい。
 彼が誰かと繋がりを残したまま物語が幕を引くというのも或いは可能だったかもしれない。しかし、それではこれまで1つのドラマがまた別のドラマを生んでという形で成立してきた物語の終わりとしては不誠実な消化不良となり、結果として作品を貶めることになっただろう。
 これで良いのだ。
 愛するものに別れを告げ、かつて旅した世界とも離れ — そうしてこの物語は正しく終わることができたのだ。
 それは最高の物語に与えられた最高の大団円 — それは指の間をすり抜けていくようなフィナーレである。

 本作にはひたすら賞賛と感謝の言葉しか見当たらない。