VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

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THE BOOKS OF MAGIC (DC/VERTIGO, #1-4, 1990-91)

  DC のオカルト沼へダイブしたい方にオススメの1冊。


The Books of Magic BKS OF MAGIC [ Neil Gaiman ]


 一見普通の少年、Timothy Hunter — だが実のところ彼は多大な魔力を秘める存在であった。そのことを見抜いた Phantom Stranger は彼を善良なる道へ導くため John Constantine , Doctor Occult , Mister E らと共に彼と接触を図ることに。最初は半信半疑だった Timothy だったが4人の魔術師に誘われて古今東西の魔法を見て回るうち、これまで知らなかった世界に対して徐々に理解を深めていく。しかし彼のポテンシャルを狙う者達は他にもおり、また4人の魔術師達も一枚岩ではないようで……?

 今やファンタジーの大家として世界に名を馳せている Neil Gaiman が DC から発表したミニシリーズ。当初は DC ユニバースのオカルト界隈にスポットライトを当てる目的で別のクリエイター陣により制作される予定だったものの諸事情によりほぼ全員降板、紆余曲折を経て Gaiman が抜擢されたという経緯があるようだが、結果として SANDMAN と共に彼の代表作として数えられるヒット作となったため結果オーライといおうか災い転じて福となすとはまさにこのこと。 John Bolton , Scott Hampton , Charles Vess , Paul Johnson という4人のアーティストによって各巻独特の幻想世界が描かれている。

 内容は実に簡単 — 将来世界最高の魔法使いになることが運命づけられている主人公の少年に対し、あらすじにある通り4人の魔術師が時間や異世界を行き来しながら様々な角度から魔法とそれに携わる者達を見せてまわるという、まあ早い話が DC のオカルト見本市。 Zatanna や Doctor Fate といった有名どころはもちろんのこと、 Doctor 13 や Tefe Holland といったややマイナーな方達まで次から次へと登場しては去っていく( Gaiman の作品なので Endless の皆さんの登場は言うまでもなく)。 DC ファンとしてそういったキャラクター達がランウェイを出たり入ったりするのを楽しむのも良し、そうでなくとも Gaiman のストーリーテリングにより初心者が読んでも十分楽しめる作品となっている(ただし、強いて言うなら Deadman についてだけ存在だけでも事前に知っておいて損はないかもしれない)。

 以前も何かの記事で言及したと思うが、高層ビルをひとっ飛びな超人や神話の世界から抜け出した女神みたいのが頭上を飛び交う世界で手から線香花火を出せたところで魔法のありがたみも薄いわけで。オカルティスト連中が DC ユニバースのような世界観でコズミック・パワーの持ち主や事故で特殊能力を手に入れたような他の者達と肩を並べるためにはもう1歩踏み込んだ”何か”が必要となる。それは時として機転であり、時として視点であり、つまりは頭と心からもたらされるものであることが多い。
 本作に登場する者達は誰もが卓越した知恵を備えていると同時に、それを自由自在に操る心の強さとでもいったものを備えている。キャラクターのカタログみたいな内容の筋にドラマがもたらされているのはそういった各々の人物が既に哲学や物語を内包しているからであり、 Gaiman 及び4人のアーティスト達がそれを解き放つ術を心得ているからに相違ない。


The Books of Magic