VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

DETECTIVE COMICS: THE BLACK MIRROR (DC, #871 - 881, 2011)

 アートで狂気を使い分け。


Batman Noir: The Black Mirror (Detective Comics (1937-2011))

 時空間の漂流から生還したBruce WayneがBatman Incorporatedの活動で世界各地を飛び回る間、Gothamの留守を託され引き続きBatmanとしての活動を続けるDick Grayson。過去に警察が押収した犯罪者達の装備品が何者かにより横流しされ取引されていることを知り捜査に乗り出した彼は、やがてThe Dealerなる人物が主催する地下オークションに潜入する。一方その頃、G.C.P.D.を率いるGordonの目の前にある日、長らく失踪していた実の息子Jamesが姿を現す。かつて猟奇的な人格を抱えていた彼はとある新薬の治験により更生したのだと語るが……。

 Morrisonサーガが終了したしBatmanはしばらくご無沙汰しても良いかと思っていたものの、丁度METALも盛り上がっているし、私個人にとってもScott SnyderのBatmanは闇の騎士という存在を決定づけたランなので、今回からSnyderサーガを扱うことにした次第。

 最初に扱うのはSnyderが初めてBatmanというヒーローを扱ったBATMAN誌から。あらすじを見ればわかる通り、時期としてはMorrisonサーガでBATMAN AND ROBINが終了し、BATMAN INCORPORATED誌が創刊された時期とほぼ同時。MorrisonがフォーカスをオリジナルBatmanであるBruce Wayneに戻した後におけるDickの活躍を描くこととなる。
 
 アーティストは後にWytchesで再びタッグをくむことになるJock、それにノワールパルプ調な絵が印象的なFrancisco Francavilla。シャープな作画をする前者と、比較的角が鈍く重々しい作画をする後者とではだいぶアートのベクトルが異なるが、Snyderはそれを巧みに使い分けることで読書体験に違和感が生じることを回避している。
 コミックにおけるアートとは、舞台におけるスポットライトだ。ライターの意図が明確になるよう恣意的な光を当て、世界からその一部を切り取る。一般にコミックでアーティストがコロコロと変わることはあまり褒められない傾向があるものの、本作のように物語を様々な角度から見るために秩序立てて使い分けるのであればその限りではない。
 
 Gothamの負の遺産に群がる入札者らの斬りつけるような狂気はJockの作画で、James Gordon Jr,のにじりよってくる狂気をFrancavillaの作画でと担当を分けることで本巻はどちらか1人のアーティストで組み上げるより遥かにリッチでサイコな物語に仕上がっている。


 そんなわけで全部が全部をカバーするわけではないものの、Scott Snyderによって手がけられたBatmanの活躍を今後も追っていきたいと思うのでどうぞよろしく。