VISUAL BULLETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

HENCHGIRL (DARK HORSE, 2017)

 一般にスーパーヴィランの下で働く悪の手先、日本で言えばショッカー団員のような存在を欧米では” Henchman ”と呼ぶ。なので乙女な彼女は Henchgirl 。


Henchgirl

  Butterfly Gang という悪党一味の下っ端として働く Mary Posa は夜な夜な街へ繰り出しては犯罪に手を染めたりスーパーヒーローと戦う日々を送っている。そんな彼女を危惧するルームメイトの友人らの勧めで真っ当な職を求めるも中々上手く行かない。ある日、とある孤児院が増築工事の補助金をだまし取ろうとする企てに一味が加担しようとしていることを知った彼女は良心の呵責に耐え切れず、密かに情報をリークしてしまう。同じ頃、街には異星人が襲来し、ヒーロー達と一戦交えるが……。
 
 元々はクリエイターである Kristen Gudsnuk が個人のウェブサイトで連載していたものを Scout Comics というところからフロッピーとして刊行した後、 Dark Horse から合本として出したのが今回ご紹介する1冊。
 以前どこかで見聞きしてサイトで少し読んだ後「これは是非とも紙で読みたい」と思い首を長くして待ち望んでいたものをようやく購入した次第です。
 ストーリー、アート共にキュートでファニーながらたまにディストピア要素も盛り込まれており(インタビューによるとゲーム INJUSTICE などの影響も窺えるとか)、何というか期待通りの期待以上。ストーリーにも飽きがなく、アタリに巡りあうことが中々難しい玉石混交なウェブコミックとしてはかなり優秀な方かと思われる。

 本作の魅力はなんといっても主人公の Mary 。実は有名なスーパーヒーローの娘であり、妹も新世代ヒーローとして頭角を表しつつあるものの、家族で1人だけ特殊能力を持たない彼女(馬鹿力の持ち主ではあるもののそれが能力かは不明)はそれがコンプレックスで悪の道に。ただ決して悪い人間というわけではなく、むしろルパンのような義賊を本人は目指している。
 周囲の期待に応えられず、理想と現実とのギャップに戸惑いつつ、善人にも悪人にもなり切れない彼女の姿は、境遇こそ特殊ながら等身大の若者のそれであり、間違いを犯しては何とか状況を「直そう」とする彼女を思わず応援したくなる。

 気になる方も大して気にならない方も、まずは是非とも Gudsnuk のホームページヘ飛んで本作を読んでみて頂きたい。きっと本書を手に取りたくなるだろう。