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初めて読むアメコミを探すな! 読者歴15年が勧める読み方

「アメコミ読んでみたいけど、どこから読んでいいかわからないよお…!」


Teen Titans by Geoff Johns Book Two TEEN TITANS BY GEOFF JOHNS BK [ Geoff Johns ]

 ネットで「アメコミ 初心者」と検索すると読んだことのない人、あるいは読み始めて日の浅い人向けにオススメのコミックを選定したサイトがそれなりの数ヒットする。
 そこに挙げられている作品を見ると、成る程それなりに前後関係を知らなくても楽しめ、なおかつ長すぎず短すぎずな分量の作品が挙げられている。

 ただ一方で「いやいやいくら名作だっつっても最初からこれ勧めてどうすんだよ」と思う作品や、いかにも無難で「これチョイスしたヤツは本当にこの作品を入り口にしたんじゃろか」と首を傾げざるを得ない作品を挙げている場合もある。


人間関係とかはまっさらだけど「ヴィジランテが存在する世界観」に関する土壌が全く整ってない日本の読者には結構辛いんじゃ…? (Watchmen: International Edition)


解説が本体のような作品を最初から勧めるのもなあ。 (Batman: Arkham Asylum 25th Anniversary)

 それなら、と私も一つ入門コミックを考えてみようとした結果辿り着いたのが…

「アメコミに初心者もへったくれもない!お前が読み始めた作品がお前にベストな入り口だ!」

…という考え。極論ですね、はい。でも的外れでもないと思うんす。

 アメコミに興味があれば何でも良いからまずは手にとって読んでみるべし。

 以下、理由を挙げていく。

1.だって広い世界観が魅力の1つなんだもん

 そもそも DC やマーベルの魅力は何だろうと考えた時、おそらく多くの人がその広大で深い世界観を挙げるのではないだろうか?
 アイアンマンのような超ハイテクヒーローが飛び回る横で、ドクター・ストレンジのような魔術師が活躍する。未知の敵が出現したかと思えば、懐かしい顔が仲間になり。大都市に宇宙に別世界にと舞台が変わる。 — このおもちゃ箱をひっくり返したようなゴチャゴチャ感こそ、アメコミ世界の醍醐味である筈だ。
 なのに初心者向けとして紹介される作品はもっぱら場所も人間関係もこぢんまりとしたものばかり…。

 アメコミ体験に断捨離は不要だ。貪欲な読者はミニマリストではない。
 最初から派手なクロス・オーバーイベントを手に取ればいいじゃない。


Infinity Gauntlet

2.ちゃんとわかってる人なんてほぼいない

 はーい、コミック中級者以上を自称する人達に質問でーす。この中でX-MENの歴史を完璧に理解している方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか?
 ゼロではないだろう。最近は電子コミックの普及もあってコミックが集めやすくなったから、中には「ええ、彼らが全身タイツを履いた獣人と戦った話も、レイチェル・サマーズが恐竜になった話も読みましたよ」という猛者がいてもおかしくはない。
 だが、実際のところメインタイトルである UNCANNY〜 誌だけでも600超、ミニシリーズやスピンオフまで全て読んでその歴史を完全に把握している者などごく一握りの筈だ。
 何を隠そう、このアメコミの中でも1,2の人気を争うミュータントチームは実のところ、様々なチームが入り乱れ、メンバーもしょっちゅう入れ替わる、最も歴史が複雑なフランチャイズでもあるのだ。


Uncanny X-Men (1963-2011) #1


Giant-Size X-Men (1975) #1


New Mutants (1983-1991) #1


X-Factor (1986-1998) #1


X-Men (1991-2001) #1


Astonishing X-Men (2004-2013) #1

 勿論、歴史が長くて複雑なのは X-MEN だけではない。スパイダーマンは今月で800号、キャプテン・アメリカは700号、スーパーマンのメインタイトルである ACTION COMICS などは記念すべき1000号。

 コミックを読んでいる者全員がこれらを全て読む時間的な余裕も金銭的な余裕もあるわけではない。むしろそんなのは少数派。大半の読者は好きなところだけつまみ食いし、わからないところはウィキペディアなどに頼っているのだ。
 実際にコミックを執筆しているクリエイター陣さえ、担当するシリーズを全て読んでいるとは限らない。
 だからまずは適当なところから飛び込んで、知らない単語やキャラが出てくる度に検索したり作品を遡るというのが現実的な読み方。 AMAZING SPIDER-MANを#1 から読んでいるのはむしろ既に読者歴数年という場合が多い。

3.完璧な入門作はない
 広い世界観がアメコミの大きな魅力の1つであることは上でも述べた。だからたまにマーベルや DC が新規読者の開拓を狙って敷居の低い作品を提供することもあるが、正直なところそういった作品は大抵力があまり入っていないため展開がぬるく、いささか物足りない。 
 例外として Darwyn Cooke による NEW FRONTIER なんかが挙げられるものの、この作品もまたメインの DC ユニバースとは別世界という設定なので、いざ本格的に DC コミックスを読み始めようと思うとまた入り口を探さなければならなくなる。


DC: The New Frontier (Collections) (2 Book Series)

 そもそも DC にしろマーベルにしろ、これらの世界観ではクリエイターの入れ替えや編集方針といった大人の事情で設定がコロコロ変わることなど日常茶飯事。ノーダメージで読み始めるというのは不可能に近い。


スリムなロボって結局何だったの? (Lobo Vol. 1: Targets (The New 52))

結論: で、結局どこから読み始めればいいの?
 不時着は免れないとしても、可能な限り無難な位置に軟着陸したい — まあ、その気持もわからないではない。私だって友人にどこから読み始めれば良いかと問われて今月発売された作品を適当に紹介するようなことはしない。
 なら、私のお勧めするベストではないけれどベターな選択としては……
 ……ええと、申し訳ない。サクッと書けるかなと思っていたのに反して、意外ときつい。
 近日中に別記事作って解説します。


番外編: 私の入り方

「ところで、そう言うお前はどうやって読み始めたのよ?」だって?ふむ。
 ぶっちゃけ茨道でしたね。
 私が現在所持しているもので最も古いアメコミは PETER PARKER, SPIDER-MAN #133 (幼い頃に処分してしまったものも多少あるため読み始めたのはもう少し前だけど)だ。
 なお、この号にも次の号にもピーター・パーカーは登場しない。
  AMAZING SPIDER-MAN 誌こそがメインタイトルだと気付いたのは3,4年経ってからのことである。


Peter Parker: Spider-Man (1999-2003) #35

  X-MEN なら最も古いのは Grant Morrison の NEW X-MEN #124 だ。「え、何でサイクロプス吊るされてんの?てか横のアンドロイドみたいの表紙にもいるけど誰?てか何?」と困惑したのを覚えている。


New X-Men (2001-2004) #124

  DC で初めて読んだのは FLASH: THE FASTEST MAN ALIVE だったと思う。#1から読み始めたので幸い上記2つよりはとっつきやすかったものの、フラッシュはバリーでもウォーリーでもなくバート・アレンだ。 INFINITY CRISIS を読んでないため何が起こっているかさっぱりだった。最初に登場したのがジェイ・ギャリックだったことも混乱を加速させた。
 同時期に JUSTICE ”LEAGUE” OF AMERICA と間違えて JUSTICE ”SOCIETY” OF AMERICA を買ったのもきつかった。


Flash: The Fastest Man Alive (2006-2007): Lightning In A Bottle (The Flash: The Fastest Man Alive (2006-2007))

 そんなヨチヨチ状態からキャラクターが出てくる度にウィキで調べたり、合本を手当たり次第漁って現在に至る。
 今でも自分がコミック読みの上級者どころか中級者だとは思わない。
 飽きっぽい性格もあり、 DC やマーベルで全部読んだと胸を張れるタイトルはほとんどないし、ダークフェニックス・サーガもヒットマンも未読の自分が玄人だなんて口が裂けても言えない。

 それでも海外のコミックニュースサイトを訪れれば記事の内容に混乱することはもうないし、掲示板の話題にも難なくついていけるくらいには知識もついた。
 名作と呼ばれている作品だって全部読んでいるわけじゃないし、今でもネットに頼ることがないでもない。
 でも、ほとんどの読者はそんなもんだ。
 誰も初心者じゃないし、逆を返せばみんな初心者。
 だからこそ、そこを掘り下げていくのが楽しいのだ。

 なので、どこから読めばよいかわからないあなたも是非、どこからでも良いから読み始めて頂きたい。

 以上。では近日中に軟着陸記事作るので乞うご期待!

 追記:以前作った軟着陸記事、いつの間にか消してました。すみません・・・。

   そのうち時間を見つけて新しいバージョン作りたいと思います。はい。

さらに追記:

その後こちらのコミックエッセイ記事を作りました。参考になるかもなのでよろしければ。

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