VISUAL BULLETS

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

アメコミだけじゃない!スーパーヒーローがテーマの小説4選

 コミックや映画で大人気のスーパーヒーロー達。

 しかし超人たちの活躍が活字の世界でも堪能できるということは意外に知られていません。
 そんなわけで今回はスーパーヒーローをテーマにした小説作品(洋書)をいくつか取り揃えてみました。正統派な正義と悪の対決からちょっと変化球の作品まであるので興味を持たれた方は是非とも手にとって見て下さい。

 なお、今回のリストではマーベルやDCのノベライズといった作品は含めていないのでご容赦を。

1.SOON I WILL BE INVINCIBLE by Austin Grossman


Soon I Will Be Invincible: A Novel

 悪の天才、ドクター・インポッシブルを主役に、ヴィランとヒーローが一大衝突に至るまでの過程とその顛末を描いた作品。
 本作を著したオースティン・グロスマンはどちらかといえばゲーム畑の人間で代表作は DISHONORED シリーズなど。刊行当時はブライアン・ヒッチの描くドクター・インポッシブルその人が表紙だったものの、 Amazon とかを見る限り今は別のものになっている模様(仮面ライダーXに登場するアポロガイストの兜みたいに見えるのは私だけですかね…??)。
  DC やマーベルのスーパーヒーローをモチーフにしたようなキャラクターが多数登場する群像劇の様相も呈し、派手な戦闘が行われる横で各々の人間ドラマが展開するクライマックスは中々迫力がある。

2.THE CAPE by Joe Hill


20th Century Ghosts (English Edition)

 空を飛ぶことができる不思議なマントを手に入れた男の姿を描いたジョー・ヒルによる作品。短編集 20TH CENTURY GHOSTS に収録されています。
 ホラーの帝王スティーブン・キングの息子としても知られるヒルは自身も現代ホラー界を大いに盛り上げているトップランナーの1人で、小説(個人的なオススメは FIREMAN )のみならず LOCKE AND KEY などコミックにも手を広げて活躍している人物です。
 原作が小説の本作もコミカライズ作品やその派生作が IDW から出ており(ただしこちらに関してはヒルが直接ライティングに携わっているわけではない)、世界観が少しずつ広がっているのも興味深いところです。


20世紀の幽霊たち (小学館文庫)(日本語版)

3.A ONCE CROWDED SKY by Tom King


A Once Crowded Sky: A Novel (English Edition)

  BATMAN や MISTER MIRACLE などのライターとして知られているトム・キング(スティーブン・キングの親戚ではない)の小説デビュー作。とある事件のせいでほとんどのスーパーヒーローが特殊能力を失った世界で、唯一その影響を免れた元サイドキックが再び世界に訪れようとしている危機に立ち向かう姿を描きます。
  WATCHMEN を思わせる陰謀的要素や911以降の米国社会を意識している世界観、それにまつわるキャラクター達の苦悩などが高く評価され、キングがアメコミ業界から注目されるきっかけを作った。現在彼が手がける多くの作品に根底で通じる部分があり、そのルーツを知ることができるものとしても一読の価値があると思います。
 

4.WHO CAN SAVE US NOW? by Various


WHO CAN SAVE US NOW?(何故か裏表紙)

  オーウェン・キング(この人はスティーブン・キングの息子)とジョン・マクナリー編集によるスーパーヒーロー縛りのアンソロジー集。様々な書き手による20編以上のオリジナル短編が BATMAN INC. などでお馴染みのアーティスト クリス・バーナムによるイラストと共に収録されています。
 中でも注目すべきは BATMAN や DARK KNIGHTS METAL で知られるライター、スコット・スナイダーによる短編 THE THIRTEENTH EGG 。
 第二次大戦時に謎の実験に巻き込まれた後、奇跡的に生還した青年が徐々に変貌していく様を描いた作品。ホラーチックな変身譚とほろ苦い青春の1ページが絶妙にマッチしており、思わず重い溜息を吐きたくなるような読後感が味わえます。
 スナイダーはは本作をきっかけにマーベルから見いだされたらしく、そのコミックデビューも本作のインスパイア元となったと思われるヒューマン・トーチのワンショットです。
 そういう意味では彼の原点を知る上で結構重要だと思う本書ですが本書自体がアンソロジーであり Amazon などで "Scott Snyder"の名で検索してもヒットしないためか、意外にもその認知度は低かったりするのが残念…。

 是非もっと多くの人に読まれてほしい作品、そしてアンソロジー集です。
 

番外編:魔法少女禁止法 by 伊藤ヒロ


魔法少女禁止法1

 魔法少女が禁止された世界で起こる陰謀と騒動を描いた伊藤ヒロによる作品。世界観やキャラクターは WATCHMEN を強く意識しているものの、魔法少女物らしい思春期のアンバランスな心の動きや派手な戦闘もしっかり描いており、一概にパロディとして馬鹿にできない魅力を放ちます。
 当初は一迅社文庫から刊行されていたものの、後に加筆した上で KADOKAWA /エンターブレインから新装版が出ており、こちらは続編も出ている模様(あらすじを見る限り魔法少女版 CIVIL WAR といったところか)。


 以上が個人的にオススメのスーパーヒーロー系小説作品です。
 
 アメコミライターの中には小説など他のメディアで活躍する人物も多数いるので、興味がある方は是非名前を探してみて下さい。