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HULK VOL.1: RED HULK (MARVEL, 2008 - )


Hulk (2008-2012) #1 (Hulk (2008-2013))(キンドル分冊)

 
 我々のよく知る Hulk ではない。

 宇宙から帰還した Hulk がニューヨークの街を壊滅させた騒動から間もなく。長年 Hulk と敵対してきたことで知られるガンマ線怪人 Abomination が何者かの手により殺害された。犯行現場の状況から Hulk の関与があったと目した Iron Man が関係者と共に実況見分を行ったところ、驚くべきことに犯人が銃を使ったと判明する。 Bruce Banner が収監された今、銃を使って犯行を重ねる赤い Hulk とは何者なのか?そして同じ頃、 Rick Jones の体に起こった異変とは…?

  WORLD WAR HULK に続いて始まった、正体不明の真っ赤な Hulk を巡る新シリーズ。クリエイター陣が一新され、ライターは最近英語系記事で読みやすいと推した Jeph Loeb 、アーティストは太めの線と大胆な構図を使った派手なアクションを得意とする Ed McGuinnes となった。 McGuiness は Joe Kelly 時代の DEADPOOL や同じく Loeb と組んだ NOVA などのスーパーヒーロー作品で知られており、2018年からは AVENGERS の新シリーズを担当することが発表されている。

 さて、今回はミステリー仕立ての Hulk だ。
 悲劇のモンスターという印象が強い Hulk だが、その歴史を見渡してみると案外柔軟性が高く、知的な支配者になったり、裏社会を牛耳るボスになったりと変化球ストーリーでもそつなくこなしてしまうような変幻自在のキャラクターだったりする。

 今回の赤い Hulk はお馴染み緑の Hulk とは別人(こちらもちゃんと登場する)だが、この応用が利くところはしっかりと受け継いでおり、 S.H.I.E.L.D. やヒーロー達を翻弄するピカレスクの主人公として活躍する。
 勿論、ストーリーがミステリー要素を含んで Hulk が銃を持つからといって直球アクションが控えめなのかと言えば、決してそんなこともなく。 Hulk はその筋骨隆々とした肉体を持て余すことなく、方々へ喧嘩をふっかけては肉弾戦を繰り広げていく。
 
 そしてこの赤い Hulk — 一部ファンの間では RedHULK を略して RULK と呼ぶことも — というのがまた強烈。あらゆる面で予想の斜め上をいく。
 銃を使うことに始まり、通常は不可侵領域となっている Watcher をこともあろうか殴りつけたり、終いには Thor のハンマー Mjolnir を持ち上げてしまうなど、次々とルールを覆してくる。俺様がルールだとでも言わんばかりのジャイアニズムを発揮する。
 ただ AVENGERS DISASSEMBLED 以来ヒーロー達の”正義”がブレブレになる中、 Rulk のアンチ・ヒーローになる気配さえない悪役ぶりは逆に清々しく、 Iron Man らを出し抜いた際には思わず声援を送りたくなるほどだ。

 これまでも Hulk は社会の”悪”として描かれることがあった。しかし、今回の Hulk は過去の誤解と不寛容に基づく怪獣的な”悪”とは全く次元の異なるものだ。
 この新たなHulkがどんな道を突き進むのか、そして我々のよく知る緑の Hulk とどんな化学変化を生み出していくのか、何よりこいつの正体は一体誰なのか。
 続きが気になってしようがないシリーズだ。


Hulk (2008-2012) #2 (Hulk (2008-2013))(キンドル分冊)


Hulk (2008-2012) #3 (Hulk (2008-2013))(キンドル分冊)


Hulk (2008-2012) #4 (Hulk (2008-2013))(キンドル分冊)


Hulk (2008-2012) #5 (Hulk (2008-2013))(キンドル分冊)


Hulk (2008-2012) #6 (Hulk (2008-2013))(キンドル分冊)


Hulk Vol. 1: Red Hulk (Hulk (2008-2013))(合本)




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