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ACTION COMICS #1 (DC, 1938)


Action Comics 1 (English Edition)

 全てはここから始まった。

 宇宙の遥か彼方で1つの星が滅亡の危機に瀕していた。惑星の最期を察した科学者は自らの息子を宇宙船に乗せて射出する。やがて地球に辿り着いた子供は通行人により発見され、預けられた先の孤児院で驚異的な身体能力を発揮するように。さらに時を経て成長したクラーク・ケントは自分の力を人々を助けるために使うことを決意した。Supermanの誕生である。

 本日遂に1000号を迎えるACTION COMICS。およそ80年前、Jerry SiegelとJoe Shusterが紡いで世界初のスーパーヒーローSupermanを世に送り出したこのシリーズは、その後のアメリカン・コミックス、ひいては世界全体を変えたと言っても過言ではない。
 今日の記事はこの記念すべき日を祝福するべくその第1号を取り扱おう。

 まずはこの見たことある人も多いであろう表紙だ。
 一見すると何の変哲もない絵だが、改めて眺めると少しおかしい。
 こういった表紙画像では普通、主人公が大きく格好良く描かれているものだが、ここでは違う。Supermanは中心にこそ据えられているものの、彼の姿は持ち上げている車に対して比較的小さく描かれており、むしろ手前で逃げ惑っている男の方が大きい。
 そこにあるのは誇らしげなヒーローの勇姿などではなく、引き込まれるような躍動感だ。 — そう、この時点ですでにACTIONは始まっているのだ。

 次にページを開いた読者が目にするのは、表紙で恐るべき力を発揮していた正体不明の怪人物、Supermanの出自を紹介する1ページだ。
 この1ページという短さにも着目したい。
 あのSpider-manでさえAMAZING FANTASY #15で初めてその力の発露を見るまで3ページ、コスチュームを見るまで6ページかかっていたというのに、本作ではClark Kentが次々と力を発揮するまでわずか3コマ、5コマ目には我々がよく知る赤と青のコスチュームを拝むことができるのだ。

 さらに物語が本格的に始まる隣のページに目を移すと、最初のコマからSupermanは女性を軽々と抱えたまま夜空を駆けており、続いてドアをぶち抜く。
 まるで読者を急かすように次から次へとアクションが展開するのだ。

 息をつく間もない活躍はその後も続く。彼は僅か13ページの間に死刑執行を間近に控えた冤罪者の潔白を証明し、妻に暴力を振るう男を止め、女性に無礼を働く輩を懲らしめ、さらに汚職政治家を糾弾する。
 全編に渡ってSupermanは目まぐるしい活躍を見せ、ほぼ全てのページで何らかの驚異的な力を見せてくれる。コスチュームが描かれていないページは1枚たりとも存在しないという徹底ぶりからは、当時コミックのメイン・ターゲットだった子供達の心を一瞬たりとも逃すまいとするSiegelとShusterの強い思いがひしひしと伝わってくる。

 本作は子供向けの作品だ。しかしそれは決して子供だましということではなく、読む者の心に直接訴えかけてくる物語であり、真っ当で痛快な活劇だということである。そしてそんな本作は大人が深いところで抱える子供心にも共鳴する。

 すごい。強い。カッコイイ。

 Supermanの活躍を見ているとそんな言葉ばかり浮かんでくる。
 ACTION COMICSというタイトルに偽りはない。

 このシリーズを1000号まで導いた最高のスーパーヒーローSuperman、彼を描いたクリエイター達、そして先立って彼を応援してきた世界中の読者に心から敬意を表したい。
 
 さあ、次の1000号までひとっ飛びだ。


Superman: The Golden Age Vol. 1 (Action Comics (1938-2011))(上記のキンドル版はモノクロのため、読むならカラーで載っているこちらの合本がオススメ)




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