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VISUAL ROCKETS −今日のアメコミ−

STILL TALKIN' ABOUT COMICS

『RUANWAYS VOL.1: PRIDE & JOY』(Marvel, 2003)

Marvel

 遥か先の未来ばかりを夢見るのは子供だ。大人なんて暇があれば過去を思い返している。
 ひたすら今を生き抜こうとする者達。
 それがティーンエイジャーだ。


原書合本版(Amazon): Runaways

 一見何の繋がりもないのに何故か毎年集会を開く6組の家族。今年も親達が何か話し合うのをよそに例の如く別室へ集められた各家庭の子供達 — Alex、 Carolina、 Gert、 Chase、Nico、そしてMollyの6人。暇を持て余した彼らがこっそり親達を覗きに行くと、そこには奇妙な衣装に身を包んだ父や母の姿が!「もしかして僕らの両親ってスーパーヒーロー!?」そう思ったのも束の間、直後大人達が無慈悲に少女を殺害するのを目撃し彼らは確信する。
 自分達の両親はスーパーヒーローなどではなく、スーパーヴィランなのだと。

 実写化実写化とだいぶ前から候補として名が上がっていたのは知っていたものの、いつの間にかキャストが決定してたぜ。でもシリーズ自体は2009年だかから宙に浮いたまま。
 そんなわけで(どんなわけでよ?)Marvelユニバースで今最も持て余されている本シリーズを一から読むことにしました。

 ライターは『SAGA』や『Y THE LAST MAN』などで現代アメコミ界を牽引していると言っても過言でないBrian K. Vaughan。ドラマ『LOST』のシナリオなんかもやってましたね。
 ペンシルは2013年の『MS. MARVEL』でKamala Khanを世に送り出したことでも知られるAdrian Alphona。コンベンションでMarvelの編集者C.B. Cebulskiに絵を見せたらその場で採用されたというのは確か彼じゃなかったかと。その才能は推して知るべし。
 カバーのJo Chenも忘れてはいけない。人物造詣は勿論のこと、構図といい色遣いといい文句なしの上手さ。#4のOld Laceに抱きつくGertとか堪りませんな。彼女、日本だとBL漫画クリエイターの”咎井 淳”という名でも知られているとか。そのうち手を出して見ようか。


本作を含む1stシリーズ全部を収めた原書合本版(Amazon): Runaways: The Complete Collection Volume 1

 さて、肝心の内容ですが。以前の記事で私青春物ってあんま得意じゃないって言ったと思うけど、訂正: 私が得意じゃないのは”真面目な”青春物 — 否、”賢い”青春物と言った方が正しいか。同記事でも述べたけれど、大半の青春物は思春期の少年少女を描いているようで実は大人の理想しか描いてない。だから台詞とか行動がやたら大人なのに、恋愛とか友情とかといった部分だけ青臭い。

visualbullets.hatenablog.jp


 ちゃんと思い出してくれ。高校時代の同級生に容姿も性格も抜群な学園のアイドルなんていたか?クール・ビューティの先輩なんて本当にいたか?ツインテールツンデレとか、おっとりお嬢様なんてのもいなかったろ?
 ティーンエイジャーなんて口を開けば色恋沙汰か大人に対する文句ばかり、調子こきながら内心は周りにどう見られてるか気になって仕様がなく。性欲というエンジンと反抗心というハンドル、それに仲間意識というブレーキだけしか積んでない無防備なプロトタイプだった筈だ。

 本作の魅力はその辺りをちゃんと、そして丁寧に表現しているところ。
 大人の理想で取り繕ったような賢さはどこにも見当たらない。6人の登場人物達は各々の形で良い子であると同時にクソガキでもある。だから散々勝手に動き回り、時に互いへの文句を垂れつつ、だが危機には互いを庇い合うことを忘れない。

 ティーンエイジャーは馬鹿だ。でも、馬鹿なりに一生懸命考えている。
 彼らは自分達が思うより遥かに馬鹿であり、大人達が考えるより遥かに物事をちゃんと見て、考えている。